「自計化」のメリットとデメリット
     

会計コラム

「自計化」のメリットとデメリット

2017/07/26 経営・税務

最近はよく、「自計化」という言葉を耳にします。
開業されて間もない方にはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、これは簡単に言いますと、日々の営業取引についてご自身もしくは自社で記帳処理を行うことをいいます。
会計データの入力には簿記の知識が必要であること、またこれまでに経理経験がない場合には記帳処理自体がスムーズに進まないこともあります。こういったことから、すべての会計処理を、税理士事務所・会計事務所に丸投げする方が多かったように思います。
しかしながら、安くて性能の良い会計ソフトも普及し、さらにはクラウド会計(インターネットが使用できる状況であればいつでも会計処理ができるシステム)なども発達してきたため、最近では以前よりも積極的に「自計化」を関与先へ進める税理士事務所も増えてきました。

では「自計化」のメリットとはどういう部分でしょうか?考えられるものを大きく3つ挙げてみたいと思います。

①タイムリーな業績の把握が可能

第一に日々の入力をその都度処理を行うことから、「今月はここまででいくら儲かっているだろう?」とふと思ったときに、事務所のパソコンを見ると、その日までの数字がタイムリーに確認できます。
しかしながら、会計事務所に入力を依頼しますと、その月を締めた時点までの資料を、まとめて会計事務所に提出する形が一般的であり、そこから会計事務所側で入力処理を行うことから、その月の数字の把握は翌月以降になってしまいます。

②記帳代行費用の削減

税理士事務所によっては、「顧問料」のほかに「記帳代行費用」が必要な場合があります。
会計データの入力を税理士事務所に任せる場合の費用を「記帳代行費用」などといいますが、これを税理士事務所に依頼せず、ご自身で入力作業を行う場合には、「記帳代行費用」を削減することが可能です。
この「記帳代行費用」ですが、意外と「顧問料」という中に含まれていると考えている事業主の方が多いです。実際に「顧問料」と「記帳代行費用」を含めて月々の報酬としている税理士事務所も増えています。税理士事務所と契約される際には、この部分はしっかりと確認する必要があります。

③資金繰りの把握や財務分析が容易

ご自身もしくは自社で会計データの入力を行うことから、自然と数字に接する機会が増加し、税理士事務所に依頼することなく、資金繰りの把握や財務分析をより正確に行うことが容易になります。

以上、3点を挙げさせていただきました。
いずれも事業主にとってはプラスのことばかりに思いますが、実際はいくつかのデメリットもあるため、簡単に述べさせていただきます。

「自計化」を進める場合、その作業をご自身で行うなら、貴重な時間を毎月一定時間はこの作業に費やす必要があります。日々の営業等が忙しくて、入力するものが溜まってしまいますと、タイムリーなデータの把握が可能となるというメリットどころか、いつまでたっても数字を把握することができません。
また従業員の方に任せる場合には、「記帳代行費用」はかからないものの、当然のことながら人件費が必要となり、また会計ソフトの費用が発生することとなります。
資金繰りや財務分析の把握にも、それぞれに必要なシステムの導入費用が必要となってきます。

以上、メリット、デメリットを挙げました。
開業して間もない方には、コスト等の点から考えますと、税理士事務所に記帳代行まで丸投げで依頼するほうが良いかもしれません。
そして事業の成長とともに、必要に応じて段階的に「自計化」へと移行することを検討してみられたらいかがでしょうか?

この記事の監修者

税理士 阿原清史

税理士
阿原清史

神戸すえひろ税理士法人
代表社員

税理士法人番号 第3774号
税理士登録番号 95483

大阪の会計事務所で実務経験を積んだ後、上場を目指すIT関係の企業に入社して、地元神戸で税理士事務所を開業いたしました。
皆様方と一緒に、活気ある神戸を目指して盛り上げていきたいと思います。