労災保険について
     

会計コラム

労災保険について

2017/09/26 社労士の雑感

「労災」という言葉を昨今よくニュースなどでも聞くようになりました。長時間労働による過労死やうつ病などの発症による過労自殺など、痛ましい事件が取り上げられる度に出てきます。今日は労災保険について少し書いてみたいと思います。

労災保険の正式名称は、「労働者災害補償保険」と言います。業務上の事由または通勤により、労働者が負傷、疾病、障害、死亡等に遭ってしまった場合に、「迅速かつ公正な保護をするため」に、保険の給付が行われます。元々、仕事で負傷等したときは、災害補償として使用者が様々な補償をすることが労働基準法で定められているのですが、その場合使用者にかかる負担が大きくなり、お金がなくて払えない、なんていうことになると、被災した労働者が保護されなくなってしまい、また事業の継続にも支障をきたします。労災保険はそのリスクを抑えることが目的になります。

一人でも労働者を使用している事業主は、一部の個人経営の農林水産業の事業を除いて強制加入になります。労災保険料は全額事業主負担となり、従業員の負担はありません。保険料率は事業内容によって分かれていて、労災が発生しやすい事業は高く設定されています。

保険の内容は、労働者が業務災害に遭って療養する場合に支給される療養補償給付、業務災害によって会社を休んだときに支給される休業補償給付、障害が残ったときに支給される障害補償給付、亡くなってしまったときに遺族に支給される遺族補償給付、葬祭を行う者に支給される葬祭料など、様々な給付があります。ちなみに、通勤災害の場合は給付の名前が少し違って、「補償」という言葉がなくなります。例えば、療養補償給付は「療養給付」、遺族補償給付は「遺族給付」、という感じです(葬祭料は「葬祭給付」になります)。

業務中や通勤途中の怪我などには、必ず労災保険を使用しないといけません。「手続きが面倒くさい」とか、「会社に迷惑をかけられない」という理由で労災保険を使わずに健康保険を使うのは違法行為になります。療養(補償)給付は健康保険と違って一部負担金なく無料で受けられますので、ちゃんと病院で「労災です」と言いましょう。

また使用者側も、労働基準監督署から調査されるのを嫌がって労災保険を適正に使わず、労働者死傷病報告を提出しないまたは虚偽の内容を提出する、いわゆる「労災かくし」をするケースがあります。これも労働安全衛生法違反の犯罪行為で、書類送検される事例もあります。

労災保険は労働者を守るものであると同時に、事業の安全な経営を支えるものでもあります。手続きはきちんと行いましょう!

この記事の監修者

税理士 阿原清史

税理士
阿原清史

神戸すえひろ税理士法人
代表社員

税理士法人番号 第3774号
税理士登録番号 95483

大阪の会計事務所で実務経験を積んだ後、上場を目指すIT関係の企業に入社して、地元神戸で税理士事務所を開業いたしました。
皆様方と一緒に、活気ある神戸を目指して盛り上げていきたいと思います。