不動産の生前贈与にはどんなメリットがある?使える制度や注意点も紹介
     

相続コラム

不動産の生前贈与にはどんなメリットがある?使える制度や注意点も紹介

2024/06/20 相続コラム

不動産を今後相続する予定のある人は、土地や建物に価値があるほど、その不動産にかかる税金を心配しているのではないでしょうか。


そこで本記事では、不動産を生前贈与する場合のメリットや、節税対策として使える制度、注意点などをご紹介します。

不動産を生前贈与するメリット

不動産を生前贈与する場合のメリットは、主に3つあります。それぞれご紹介します。

①希望する相手に確実に財産を贈与できる

不動産の生前贈与は、希望する相手に確実に財産を引き継ぐことができる大きなメリットがあります。

所有者が生きている間に不動産の名義を変更できるため、相続時の遺産分割協議でのトラブルや、不動産の共有に伴う問題を回避できるのです。

また、法定相続と異なり、近くに住む親族や世話をしてくれる人など、自分の希望する相手に柔軟に不動産を渡すことが可能です。

このように生前贈与は所有者の意思を明確に示す方法であり、相続時の混乱や誤解を減らすことができると言えます。

さらに、相続税対策を含めた計画的な資産移転も可能になります。不動産の生前贈与は所有者の意思を確実に反映し、将来の相続トラブルを防ぐ有効な方法ではありますが、税金面での考慮や他の相続人への影響など、慎重に検討する必要があります。

②相続税を減らせる場合がある

不動産の生前贈与は、相続税を減らせる可能性のある効果的な相続税対策です。贈与税と相続税は最高税率は同じ55%ですが、控除額などが異なるため、状況によっては贈与を選ぶことで総額の税負担を減らせる可能性があります。

年間110万円以下の非課税枠を活用した計画的な贈与や、将来値上がりが予想される不動産の早期贈与、収益不動産の贈与による相続財産の抑制などが、税負担軽減の方法として考えられます。

ただし、相続時にのみ適用される「小規模宅地等の特例」は贈与では使えないなど、注意点もあります。贈与と相続のどちらが税制上有利かは個々の状況によって異なるため、財産の種類、金額、将来の見通しなどを総合的に考慮する必要があります。

③認知症対策になる

不動産の生前贈与は、認知症対策としても有効な方法です。認知症になると、不動産の管理や売却、遺言書の作成などが困難になる可能性があるため、判断能力がある段階で対応することが重要です。そのため生前贈与を行うことで、相続時の複雑な手続きを避け、将来の不確実性に備えることができます。

家族間で将来の資産管理について話し合う機会にもなり、相続に関する合意形成や心の準備にもつながります。ただし、現在の生活への影響や他の相続人との公平性など、慎重に検討する必要があります。

生前贈与で節税対策として利用できる制度

ここでは、生前贈与で節税対策ができる制度についてご紹介します。

①相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、不動産の税金対策として非常に効果的な方法です。この制度では、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与に対し、累計2,500万円までの贈与税が免除されます。さらに、2024年1月からは年間110万円の新たな基礎控除が追加され、より柔軟な活用が可能になりました。

例えば、2,500万円の不動産贈与では、通常の暦年課税で810万5千円の贈与税がかかるところ、この制度を使えば贈与税がゼロになります。

ただし、将来の相続税計算時には贈与された財産が加算されること、一度この制度を選択すると暦年贈与に戻れないことなどの注意点があります。高額の不動産や資産を次世代に早めに移転したい場合に特に効果的ですが、個々の状況に応じた最適な活用方法があるため、税理士などの専門家に相談しながら検討することをお勧めします。

②配偶者控除

「配偶者控除」(通称「おしどり贈与」)は、不動産の税金対策として有効な方法の一つです。婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合、2,000万円まで贈与税が非課税となります。さらに、暦年贈与の基礎控除(110万円)と併用可能で、合計2,110万円まで贈与税がかかりません。この制度は、遺産総額が大きく配偶者に相続税がかかる場合に特に効果的ですが、相続税額が小さい場合は、生前贈与にかかる諸費用のほうが大きくなる可能性もあるため注意が必要です。

利用する場合は、贈与があった年の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告が必要です。高額の居住用不動産を所有している夫婦にとって魅力的な選択肢となりますが、個々の状況によって効果が異なるため、税理士などの専門家に相談しながら、総合的な相続税対策の一環として検討することをお勧めします。

不動産を生前贈与する際の注意点

不動産の生前贈与にはメリットがある一方、慎重に決めることが大切です。ここでは、特に確認すべき注意点をご紹介します。

①贈与契約書を作成する必要がある

不動産の生前贈与を行うには、贈与契約書の作成が必要です。法律上は口頭での約束でも贈与契約は成立しますが、実際の手続きや税務上の理由から、書面での契約が強く推奨されます。贈与契約書には、以下の5つの項目を記載する必要があります。

この契約書は、名義変更手続きに必要な「登記原因証明情報」の基礎となり、贈与税の基礎控除適用のための客観的証明にもなります。また、将来的な争いや誤解を防ぎ、税務調査の際の証拠書類としても活用できます。作成時は日付を正確に記入し、両者が署名・押印することも忘れずに行いましょう。また、不動産の場合は物件を特定する詳細情報も記載が必要です。

適切に作成された贈与契約書は、生前贈与を円滑に進め、贈与者の意思を明確に記録し、受贈者の権利を保護する重要なツールとなります。

②生前贈与加算に注意

「生前贈与加算」は、相続発生時に一定期間内の生前贈与額を相続財産に加算して税金を計算しなくてはならない制度です。2024年1月1日からの制度改正により、加算対象期間が相続開始前3年から7年に延長されました。これにより、贈与後7年以内に相続が発生すると、贈与財産が相続財産に加算されるため、生前贈与の効果が薄れる可能性が高まりました。

この改正は、大規模な節税目的の贈与を抑制し公平な課税を実現する一方で、純粋な資産移転目的の贈与にも影響を及ぼします。対策としては、より長期的な視点での贈与計画が必要となり、7年以上前からの計画的な贈与を検討する必要があると言えるでしょう。

③登録免許税や不動産取得税に注意

不動産の生前贈与を行う際には、贈与税の他に登録免許税と不動産取得税という2つの重要な税金がかかります。登録免許税は不動産の登記時にかかり、固定資産税評価額の2%が課税されます。不動産取得税は受贈者が支払う税金で、固定資産税評価額の3%の税率です。

例えば、評価額3,000万円の土地を贈与する場合、登録免許税は60万円、不動産取得税は90万円となります。両税の計算では、評価額の1,000円未満と計算結果の100円未満を切り捨てます。これらの税金は特に、小額の贈与では相対的に大きな負担になる可能性があります。ただし、宅地の場合、不動産取得税は半額になります。不動産の生前贈与を検討する際は、これらの追加費用も含めた総合的なコスト計算が重要です。

不動産の生前贈与には、メリットも多い半面、注意すべきこともあります。本記事を参考に、生前贈与の計画を慎重に進めてみてください。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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