- 神戸で税理士による相続税の申告手続きHOME
- 相続コラム
- 遺産5000万円の相続税はいくら?利用できる控除・特例と早見表も紹介
遺産5000万円の相続税はいくら?利用できる控除・特例と早見表も紹介
2024/09/30 相続コラム
目次
被相続人が5,000万円の遺産を遺した場合、どのくらいの相続税がかかるかご存知でしょうか。実際には、相続人の数や構成、適用される控除や特例によっても異なります。そこでこのコラムでは、遺産5000万円にかかる相続税の早見表、相続税のかかる財産の種類、適用される可能性がある控除や特例について解説します。
遺産5000万円にかかる相続税
相続税制において、遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。この基礎控除額は「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。
遺産が5000万円の場合は、相続人の構成によって課税される金額が大きく変わります。例えば、法定相続人が1人の場合、基礎控除額は3600万円となり、課税対象となる金額は1400万円です。一方、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4800万円となり、課税対象は200万円に減少します。 このように、遺産総額が同じでも、相続人の数や構成によって実際の課税額は大きく異なります。さらに、配偶者の税額軽減措置など、様々な特例も適用される可能性があるため、具体的な状況に応じた詳細な計算が必要となります。
相続税の早見表
ここでは、<配偶者と子が相続人の場合>と<子だけが相続人の場合>の相続税の早見表をご紹介します。大まかな税額をすぐに確認したい時に参考してみてください。
<配偶者と子が相続人の場合>
遺産総額 | 配偶者+子ども1人 | 配偶者+子ども2人 | 配偶者+子ども3人 | 配偶者+子ども4人 |
---|---|---|---|---|
5,000万円 | 40万円 | 10万円 | 0 | 0 |
6,000万円 | 90万円 | 60万円 | 30万円 | 0 |
7,000万円 | 160万円 | 113万円 | 80万円 | 50万円 |
8,000万円 | 235万円 | 175万円 | 138万円 | 100万円 |
9,000万円 | 310万円 | 240万円 | 200万円 | 163万円 |
1億円 | 385万円 | 315万円 | 262万円 | 225万円 |
2億円 | 1,670万円 | 1,350万円 | 1,217万円 | 1,125万円 |
3億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 | 2,350万円 |
<子だけが相続人の場合>
遺産総額 | 子ども1人 | 子ども2人 | 子ども3人 | 子ども4人 |
---|---|---|---|---|
5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 | 0 |
6,000万円 | 310万円 | 180万円 | 120万円 | 60万円 |
7,000万円 | 480万円 | 320万円 | 220万円 | 160万円 |
8,000万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 | 260万円 |
9,000万円 | 920万円 | 620万円 | 480万円 | 360万円 |
1億円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 | 490万円 |
2億円 | 4,860万円 | 3,340万円 | 2,460万円 | 2,120万円 |
3億円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 | 4,580万円 |
プラスの財産とマイナスの財産
遺産には、不動産や預貯金、株式などのプラスの財産と、債務や負債を意味するマイナスの財産の2種類があります。そこでここでは、この2つの財産についてより詳しく解説していきます。
プラスの財産
「プラスの財産」は、被相続人が残した経済的価値のある資産全般を指します。これらは相続税の計算基礎となり、相続人間で分配される対象となります。代表的なプラスの財産には、まず不動産があります。土地や建物は多くの場合、相続財産の中核を成します。その評価額は路線価などを基に算出されますが、実勢価格との乖離に注意が必要です。
また、現金や預貯金も重要なプラスの財産です。これらは評価が容易で、相続人間での分割もしやすい特徴があります。株式や投資信託などの有価証券も、相続時の時価で評価されます。
そして生命保険金も、契約形態によってはプラスの財産となります。ただし、一定額までは非課税扱いとなる特例があります。
事業用資産や知的財産権、貴金属、美術品なども相続財産に含まれます。これらは専門家による適切な評価が必要となる場合が多いです。
また、被相続人が生前に贈与した財産の一部も、相続時精算課税制度などにより相続財産に加算されることがあります。
マイナスの財産
「マイナスの財産」は、被相続人が残した債務や負債を指します。これらは相続財産の価額から控除され、相続税の計算に影響を与える重要な要素です。
代表的なマイナスの財産には、まず住宅ローンや事業資金の借入金があります。被相続人が亡くなった時点で残っている借入金の残高が、相続財産から差し引かれます。
また、クレジットカードの未払い金や公共料金の未払い分も、マイナスの財産として扱われます。これらは比較的少額ですが、確実に把握することが重要です。
そして医療費や介護費用の未払い分も、マイナスの財産に含まれます。特に長期入院や介護サービスを利用していた場合、相当額になる可能性があります。
葬儀費用も、一定の範囲内でマイナスの財産として認められます。ただし、社会通念上適正と認められる金額に限られるため、過度に豪華な葬儀の場合は全額が認められない可能性があります。
相続税や贈与税の未払い分も、マイナスの財産となります。被相続人に納税義務があった場合、その未納分は相続財産から控除されます。
マイナスの財産の把握は、相続人の利益を守るだけでなく、適正な相続税額の算出にも不可欠です。相続放棄をしない限り、相続人はこれらの債務も引き継ぐことになるため、慎重な検討が必要といえます。
相続税を算出する際に利用できる可能性がある控除と特例
下記は、相続税の計算に適用できる代表的な控除と特例です。- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例
- 未成年者控除
- 障害者控除
配偶者の税額軽減
「配偶者の税額軽減」は、残された配偶者の生活保障を目的としており、一定の条件下で配偶者が相続する財産に対する相続税を軽減または免除します。具体的には、配偶者が相続によって取得した財産の金額が、以下の2つのうちいずれか大きい方の金額までであれば、その部分にかかる相続税が免除されます。
- 配偶者の法定相続分相当額
- 1億6,000万円
例えば、遺産総額が3億円で法定相続人が配偶者と子ども1人の場合、配偶者の法定相続分は1億5,000万円となりますが、1億6,000万円まで相続税が課税されません。この制度により、多くの場合、配偶者は相続税を支払うことなく、ある程度の財産を相続することができます。ただし、相続する財産が1億6,000万円を超える場合は、超過分に対して相続税が課税されます。
小規模宅地等の特例
「小規模宅地等の特例」は、被相続人等が住居や事業に使用していた土地の評価額を大幅に減額できる特例制度です。この特例は、相続人の生活基盤や事業継続を支援する目的で設けられています。主な適用対象と減額率は以下の通りです。
被相続人の自宅の敷地(居住用宅地)- 適用限度面積:330㎡
- 減額率:80%
- 適用限度面積:400㎡
- 減額率:80%
- 適用限度面積:200㎡
- 減額率:50%
この特例を適用するには、一定の要件を満たす必要があります。例えば、相続人が相続後も一定期間その土地を居住や事業の用に供することなどが条件となります。
未成年者控除
「未成年者控除」は、相続人が未成年者である場合に適用される特別控除制度です。この制度は、親を亡くした未成年者の将来の生活保障を目的としています。控除額の計算方法は以下の通りです。
100万円 × (18歳 – その人の年齢)
例えば、15歳の相続人の場合、控除額は以下のようになります。
100万円 × (18 – 15) = 300万円
この控除は、相続税の税額から差し引かれます。また、未成年者控除は、相続開始時(被相続人の死亡時)に18歳未満の相続人に適用されます。複数の未成年者が相続人である場合、それぞれに控除が適用されます。 この控除は養子を含む実子に適用されますが、特別養子縁組による養子以外の養子については、1人までしか適用されません。 なお、未成年者控除は自動的に適用されるものではなく、相続税の申告時に適用を選択する必要があるので気をつけましょう。
障害者控除
「障害者控除」は、相続人が障害者である場合に適用される特別控除制度です。この制度は、障害を持つ相続人の生活保障を目的としています。控除額の計算方法は以下の通りです。
- 一般障害者の場合:85歳に達するまでの年数 × 10万円
- 特別障害者の場合:85歳に達するまでの年数 × 20万円
例えば、40歳の一般障害者の場合は、下記のような計算になります。
(85 – 40) × 10万円 = 450万円
また、30歳の特別障害者の場合は、下記のような計算になります。
(85 – 30) × 20万円 = 1,100万円
この控除額は、相続税の税額から差し引かれます。
なお、「一般障害者」とは、例えば障害者手帳3級から6級の所持者などを指し、「特別障害者」は、障害者手帳1級・2級の所持者や重度の知的障害者などを指します。
障害者控除は相続開始時(被相続人の死亡時)に障害者である相続人が対象です。
今回ご紹介したように、遺産5,000万円にかかる相続税は、相続人の数と構成、そして利用できる控除と特例などによっても異なります。ただ、ざっくりとした相続税に関しては、早見表を活用することで把握することが可能なので、相続税の額面が大きくなる場合などは、早見表で確認した税額を元に、準備を勧めておけると安心でしょう。
この記事の監修者
税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。