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自動車を相続したときの名義変更手続き|必要書類・流れ・注意点を徹底解説
2025/10/23 相続コラム

家族が亡くなったあとに残される財産には、不動産や預貯金だけでなく、自動車も含まれます。車を引き継ぐには、相続手続きの一環として「名義変更(移転登録)」が必要です。名義変更を怠ると、売却や廃車ができないだけでなく、自動車税や保険の更新でトラブルになる可能性があります。
本記事では自動車の名義変更をテーマに、普通自動車と軽自動車それぞれの流れや必要書類、注意点をわかりやすく解説します。相続した車をスムーズに扱えるよう、早めに必要な手続きを把握しておきましょう。
普通自動車の所有者が死亡した場合の手続きの流れ
相続が発生すると、故人が所有していた普通自動車は相続人全員の共有財産になります。まずは「誰が引き継ぐのか」を確定し、そのうえで運輸支局で名義変更(移転登録)を行うのが基本線です。以下では、最初の確認ポイントから実際の手続きまで、順を追って解説します。
自動車検査証(車検証)の所有欄を確認する
名義変更の起点は「車検証の所有者」の確認です。所有者と使用者が一致しないケース(ローン購入・リース等)も多く、ここを誤ると手続きをやり直すことになりかねません。手元に車検証がない場合は、登録事項等証明書の取得でも代替できます。
車の所有者が故人
所有者欄が被相続人であれば、その車は相続財産として扱われます。いったん相続人全員の共有となるため、遺産分割で承継者を1名に定めるのが実務的です。共有のまま残すことも可能ですが、将来の売却・廃車・保険変更の都度、全員の同意が必要となり負担が増します。
車の所有者がディーラーや信販会社などの場合
所有権留保(ローン残あり)のときは、車検証の所有者が販売会社・信販会社になっています。この場合、相続による移転登録の前提として残債の完済と所有権解除が必要です。解除手続きの案内や必要書類は所有権者に確認し、完済証明の取得までをセットで進めましょう。
自動車の新たな所有者を決める
承継者の決定は、以降の書類構成を左右します。遺言の有無、相続人の人数により必要書類が変わるため、ここでの整理がスムーズな名義変更につながります。
相続人が複数いる場合は遺産分割協議
遺言書がないなら、相続人全員で遺産分割協議を行い、車の承継者を定めます。協議書には車名・型式・車台番号・登録番号など特定情報を記載し、相続人全員が署名押印します。預貯金や不動産とひとまとめに作成しても差し支えありませんが、車だけを対象にした簡易様式を用いることもできます。
遺言書がある場合は遺言書の内容を優先
被相続人の意思が最優先です。公正証書遺言は検認不要、自筆証書遺言・秘密証書遺言は原則として家庭裁判所の検認後に手続きへ進みます。車の承継者が遺言で指定されていれば、その内容に沿って移転登録を行います。原本は相続手続き完了まで厳重に保管しましょう。
相続人が1人であり遺言書がない場合
相続人が単独の場合は遺産分割協議は不要です。車を含む一切の遺産が単独相続人に帰属するため、その人を新所有者として移転登録を行います。
運輸支局で名義変更の手続きをする
承継者が確定したら、必要書類をそろえて新所有者の住所地を管轄する運輸支局(または自動車検査登録事務所)に申請します。使用の本拠が変わって管轄が異なるとナンバー変更・封印作業が伴う場合があるため、当日の車両持込可否も含めて事前確認が安心です。申請が受理されると、その場で新しい車検証が交付されます。
普通自動車の名義変更手続きの必要書類
ここでは、相続による移転登録で一般的に求められる書類を整理します。状況により増減や代替があるため、実際には管轄の運輸支局での最終確認を前提にしてください。
まず、基本セットとして以下の書類を準備します(名称は管轄により表記が異なることがあります)。
- 移転登録申請書
- 自動車検査証(車検証)※車検切れは先に継続検査が必要
- 手数料納付書(所定額の登録印紙貼付)
- 戸籍謄本等(被相続人の死亡の事実と、被相続人と相続人全員の関係がわかるもの)
- 新所有者の印鑑証明書(発行3か月以内)
- 車庫証明(使用の本拠が変わる場合、証明日から40日以内)
次に、相続関係の根拠書類として、下記のいずれかを添付します。どれを使うかはケースにより異なります。
- 相続人全員の実印で作成した遺産分割協議書
- 遺言書(公正証書遺言/検認済み自筆証書遺言 等)
- 家庭裁判所の調停調書・審判書・判決謄本 など
- 遺産分割協議成立申立書+査定証や相場資料の写し(時価100万円以下の車両のみ)
代理人申請・所有者と使用者が異なる場合・相続人全員で申請する場合などは、譲渡証明書や委任状が追加で必要になります。申請直前に、窓口でチェックリストに照らして不足がないか最終確認すると、差戻しのリスクを抑えられます。
普通自動車の名義変更する際の注意点
名義変更は「期限・税・保険・管轄」の4点を押さえると失敗が減ります。新所有者が決まったら15日以内の申請が原則で、先延ばしにすると自動車税の賦課や保険の補償、売却・廃車の可否に影響します。また、使用の本拠変更でナンバーが変わる場合は封印作業が必要になるため、当日の段取り(車両持込や予約)を忘れずに整えましょう。
自動車の価格が100万円以下の場合
車の時価が100万円以下であれば、相続関係の立証を簡略化できる「遺産分割協議成立申立書」の活用が検討できます。申請人(承継者)のみの署名押印で足り、相続人全員の実印は不要です。ただし、100万円以下であることの根拠として、JAAI(日本自動車査定協会)の査定証や買取相場の写し等を添付します。運用は管轄で差があり得るため、提出前に窓口で可否を確認しましょう。
代理人に手続きを依頼する場合
書類収集や窓口対応の負担を抑えるなら、販売会社や行政書士に委任する方法があります。委任状(実印)と代理人の本人確認資料のほか、車庫証明や所有権解除が絡む場合は関係先との連絡も一括で任せられるケースが一般的です。費用は地域・案件難度で変わるため、複数社から見積を取り、納期・範囲・追加費用の発生条件まで明示してもらうと安心です。
軽自動車の名義変更の流れ
相続した車が軽自動車なら、手続き先は軽自動車検査協会になります。普通車より求められる書類が少ないのが特徴で、遺産分割協議書の添付を求めない取り扱いが多く見られます。
準備の基本は、①軽自動車検査証、②新使用者の住民票または印鑑証明、③被相続人の死亡が記載された戸籍謄本と関係が分かる戸籍、④記入申請書(軽第1号様式)です。ナンバー変更がなく単純に名義だけ変える場合、手数料が無料の扱いとなる地域実務もあります。最寄りの事務所で最新の運用を確認してから向かいましょう。
相続した自動車は相続税の対象
自動車は一般動産として相続税の課税対象に含まれます。評価は死亡日時点の時価が原則で、中古車買取業者の査定や相場情報を根拠にするのが実務的です。高年式車・高額車両は評価額が大きくなりやすいため、申告漏れに注意してください。なお、ローン残債は債務控除の検討対象になります。遺産総額が基礎控除内であれば申告不要のケースもありますが、可否判断は税理士等の専門家へ早めに相談すると安全です。
名義変更は「所有者確認→承継者決定→運輸支局で移転登録」という一本道です。ローン残や管轄変更、保険名義・自動車税の申告など、派生する付随手続きまで一気通貫で進めるとやり直しが減ります。車の時価が100万円以下なら簡便手続の余地があり、軽自動車は協会で比較的スムーズに進められます。期限と根拠書類を外さず、必要に応じて専門家や販売会社のサポートを活用しましょう。
この記事の監修者

税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。