区役所・市役所でも相続相談ができる?相談内容やメリット・デメリットを紹介
     

相続コラム

区役所・市役所でも相続相談ができる?相談内容やメリット・デメリットを紹介

2026/02/26 相続コラム

相続の手続きは、戸籍集めから預貯金の解約、不動産の名義変更、相続税申告まで幅広く、「何から手を付ければいいのか分からない」と感じやすい分野です。そんなときに候補に上がるのが、区役所・市役所で実施されている“相続の無料相談”。弁護士・税理士・司法書士などの専門家に、費用をかけずに相談できるのは大きな魅力です。

ただし、役所の相談は万能ではありません。時間制限や相談範囲の制約があり、書類の添削や具体的な代行までは対応できないケースが一般的です。この記事では「区役所・市役所で相続相談はどこまでできるのか」「向いている相談内容/向いていない相談内容」「メリット・デメリット」「税理士へ相談すべき場面」を、実務目線で分かりやすく整理します。

区役所・市役所にある相続の無料相談窓口とは

区役所・市役所で相続相談ができるといっても、窓口で職員が相続の個別判断をしてくれるわけではないケースが多く、実態は「自治体が開催する無料相談会(専門相談)」を利用する形が中心です。相談員は弁護士・税理士・司法書士・行政書士などで、自治体が日時を設定し、予約制で運用していることが一般的です。対象も「区内・市内在住(在勤)」など条件がある場合があるため、まずは自治体のホームページや広報紙で実施日、予約方法、相談分野(法律・税務・登記など)を確認するのが第一歩になります。

また、相談枠は20~30分程度と短めなことが多く、同一内容の相談回数に制限が設けられている場合もあります。役所の無料相談は「いきなり専門家事務所に行く前に、全体像や方向性を掴む入口」として活用すると相性が良く、反対に「個別事情に即した結論が欲しい」「書類を完成させたい」「相続税を下げる設計までしたい」といった目的だと物足りなく感じやすい点も押さえておきましょう。

区役所・市役所でできる相続の相談内容

役所の無料相談で扱える範囲は、相談員の士業資格と、自治体が設けている運用ルールによって決まります。たとえば相続トラブルなら弁護士、相続税なら税理士、登記なら司法書士、書類作成の一般論なら行政書士、といった具合に「誰に相談するか」で得られる答えの種類が変わります。

ここで大事なのは、役所相談は“ケースの整理と一般的な道筋の提示”が主目的になりやすいことです。たとえば、期限のある手続き(相続放棄など)で「いつまでに何をする必要があるか」を確認したり、必要書類の種類を把握したり、次に相談すべき専門家の当たりをつけたりする用途には向きます。逆に、相続人同士の交渉を任せたい、税額を試算して節税策まで決めたい、登記申請書を完成させたい、といった“作業や責任を伴う領域”は役所相談だけで完結しにくい、という前提で読み進めてください。

相続トラブルについて

「遺産を独占しようとする人がいる」「話し合いに応じない」「介護の負担をどう評価するのか」「遺留分を請求できるのか」など、感情面も絡みやすい相続トラブルは、役所の無料相談でも入口として相談できます。ポイントは、トラブルが“紛争化しているか”どうか。すでに対立が強い場合、解決のために相手方との交渉や代理が必要になることがありますが、代理交渉を行えるのは原則として弁護士のみです。役所の相談で弁護士枠を選べば、争点の整理(何が問題か、法律上の論点は何か)や、取るべき手段(遺産分割協議の進め方、調停・審判の可能性など)の見通しを立てる助けになります。

一方で、役所相談では時間が限られ、資料も十分に揃っていないことが多いため、細かな証拠整理や具体的な交渉戦略まで踏み込むのは難しいのが現実です。トラブルの芽が見えている段階で早めに相談し、「これ以上こじれる前に、どこで線を引くか」を確認する使い方が効果的です。

相続放棄について

相続放棄は「借金も含めて相続しない」ための制度で、原則として“相続の開始を知った日から3か月以内”という期限があるため、スピードが重要です。役所の無料相談では、相続放棄をすべき状況の典型例、手続きの流れ、必要書類、注意点(単純承認になり得る行為、遺産の処分に当たる行為など)といった一般的な説明を受けられる可能性があります。弁護士や司法書士の枠があれば、家庭裁判所への申述の考え方も含めて、次にやることを整理しやすいでしょう。

ただし、相続放棄は“家庭裁判所への申述”という実務があり、事情によっては期限の起算点や、熟慮期間の伸長の検討など、個別判断が絡むこともあります。役所相談で方向性を掴みつつ、財産・負債の調査が間に合わない、相続人関係が複雑、すでに一部支払いをしてしまった等の事情があるなら、早い段階で専門家へ正式相談するのが安全です。

相続税申告について

相続税申告の相談は、税理士が担当する相談枠で取り扱われることが多く、「申告が必要かどうかの判断材料」「申告までの一般的な流れ」「どんな添付書類が要るか」「期限(相続開始から10か月)をどう見積もるか」といった“全体設計”を確認するのに向いています。特に、相続税がかかるか分からない段階では、基礎控除や財産評価の考え方をざっくり把握できるだけでも、気持ちが楽になります。

一方で、役所の無料相談は個別の資産状況を踏まえた踏み込んだ節税提案や、評価の細部(不動産評価、非上場株式など)までをその場で完結させることは難しい傾向があります。また、申告書の作成やチェック、税額の試算を責任をもって行うには資料収集と検討時間が必要です。役所相談は「申告が必要になりそうか」「どこが難所か」を把握する場として使い、必要性が見えたら税理士へ早めにバトンタッチするのが現実的です。

不動産の相続登記について

不動産の相続登記(名義変更)は、司法書士が専門分野であり、役所の司法書士相談枠で「必要書類」「登記の流れ」「誰の名義にするか決める際の注意点」などを相談できます。とくに近年は相続登記の義務化が進み、「放置していた土地がある」「親の名義のままの家がある」といったケースが表面化しやすくなりました。役所相談で登記の全体像を掴むと、戸籍収集や遺産分割協議の準備が具体的になります。

ただし、登記は“申請書の作成・添付書類の整合性・登録免許税の計算”など、細かな作業が積み上がる領域です。役所相談では書類の全文点検や作成代行まで踏み込めないことが多いため、登記を確実に終わらせたい場合は、相談で得た要点をもとに司法書士へ正式依頼する流れがスムーズです。相続人が多い、戸籍が複雑、遺産分割協議が絡む場合ほど、最初から専門家の関与を前提にした方が結果的に早く終わります。

遺言書や遺産分割協議書の作成について

遺言書や遺産分割協議書の作成相談は、行政書士や司法書士、場合によっては弁護士の枠で取り扱われます。役所相談では「遺言書の種類(自筆・公正証書など)の違い」「一般的な書き方」「遺産分割協議書に何を書くべきか」「署名押印や実印・印鑑証明の扱い」といった基本を確認しやすく、初学者には非常に有益です。特に、何をどの順番で決め、どの書類に落とし込むのかが分かるだけでも、家族会議の進め方が変わります。

一方で、書類は“文言がそのまま権利関係を固定する”ため、ちょっとした表現の違いが後々の紛争や手戻りにつながることがあります。役所相談では、個別事情を踏まえた条文案の作成や、完成稿の添削をしてもらえないことが多い点に注意が必要です。「揉めそう」「財産が複雑」「特定の相続人へ多く渡したい」「遺留分が気になる」といった事情があるなら、役所相談で論点を整理したうえで、専門家に文案作成まで任せるのが安全です。

区役所・市役所に相続相談するメリット

役所の相続相談の最大のメリットは、何といっても“無料で専門家に相談できる”ことです。相続は一度きりの経験になりやすく、専門家へいきなり相談すると費用が気になって躊躇してしまう方も少なくありません。その点、区役所・市役所の相談は心理的ハードルが低く、「まず全体像を知りたい」「どの専門家に相談すべきか分からない」「期限のある手続きを落としたくない」といった初動の不安を解消しやすいのが強みです。

また、相談窓口は相続だけでなく、遺言、離婚、借金、住まいなど生活課題全般を扱うことが多く、相続問題が他の課題と絡んでいるときにも入口として機能します。相談に行く前に、家系図(簡単でOK)・財産のメモ・困っていることを箇条書きで準備しておくと、短時間でも得られる情報量が増えます。「何を聞くべきか」を整理するだけでも、次の一手が見えやすくなるでしょう。

区役所・市役所に相続相談するデメリット

役所の相談は便利ですが、期待値を上げすぎると「聞きたかった答えまで届かなかった」と感じることがあります。デメリットの中心は、①時間・回数の制限、②回答が一般論に寄りやすい、③書類の添削や代行ができない、④その場で正式依頼につながりにくい、の4点です。要するに、役所相談は“解決そのもの”より“道案内”として設計されていることが多い、という理解が大切です。

特に相続は、資産内容・家族関係・感情の対立・期限の有無など、状況によって最適解が変わります。一般論が役に立つ局面も多い反面、複雑なケースほど「結局、個別相談が必要」という結論になりやすいのも現実です。以下では、よくあるデメリットを具体的に見ていきます。

時間制かつ回数制限がある

区役所・市役所の無料相談は、多くの住民に機会を提供する目的があるため、1回あたり20~30分程度の時間制で運用されることが一般的です。また「同一案件は1回(または2回)まで」「年度内○回まで」など回数制限が付くこともあります。相続は前提説明に時間がかかるため、短時間だと“背景説明だけで終わってしまう”ことも起こりがちです。

この制約を乗り越えるコツは、相談前に①相続人関係(誰がいるか)、②財産の種類(預貯金・不動産・保険・借金など)、③困りごと(期限・揉めそう・書類が不安等)を1枚にまとめること。とはいえ、資料が多い・事情が複雑・感情対立が強いほど短時間では足りません。その場合は役所相談を“整理の場”として割り切り、次の正式相談につなげるのが現実的です。

一般的な質問しか対応してもらえない

無料相談では、どうしても一般的な説明が中心になりやすい傾向があります。理由はシンプルで、限られた時間内で相談者ごとの資料確認や事実調査を十分に行えないからです。また、相談員側も“責任ある個別判断”を前提としない場であるため、断定を避け、一般論として回答する運用になりがちです。

そのため「このケースで私が勝てますか?」「この分け方で確実に揉めませんか?」「この評価で税務調査に耐えますか?」のような、個別事情を前提にした結論を求めるとギャップが生まれます。役所相談は「論点のあたりをつける」「選択肢を知る」「次に集める資料を知る」など、情報収集型の相談に向いていると捉えると満足度が上がります。

書類の添削は不可

相続に関する書類(遺産分割協議書、遺言、相続税申告書、登記申請書など)は、内容の正確性が非常に重要です。しかし、役所の無料相談では、作成済み書類の添削や全文点検は原則として対応不可となるケースが多いです。短時間で責任を負う形のチェックを行うのは難しく、万が一の誤りが重大な不利益につながる可能性があるためです。

「ここに何を書けばいいか」「一般的に必要な記載要素は何か」といった“方向性の相談”はできても、「この文言で提出して大丈夫か」を保証してもらうことは期待しない方が安全です。書類を完成させたい場合は、役所相談で不足点を洗い出した後、専門家へ正式依頼して最終形に仕上げる流れが確実です。

その場で専門家に依頼できない

役所の無料相談は、あくまで公的な相談機会として運営されているため、相談した専門家へその場で契約・依頼まで一気通貫で進める設計ではないことが一般的です。見積作成や資料精査の時間がなく、自治体のルールとして紹介・あっせんが制限されていることもあります。

その結果、「この先生に頼みたい」と思っても、結局は別途その事務所を探して連絡し、改めて初回面談を取り直す必要が出て、二度手間に感じることがあります。だからこそ、役所相談は“依頼先探し”ではなく“自分の状況の整理”に重点を置くと活用しやすいです。最終的に依頼が必要になりそうなら、相談後すぐに専門家事務所へ移行できるよう、資料の準備を進めておくとスムーズです。

税理士に相続相談すべき理由とは

相続手続きは、弁護士・司法書士・行政書士など複数の専門家領域にまたがりますが、「相続税がかかる可能性がある」「財産の評価が難しい」「特例を使えるか不安」「二次相続まで含めて損しない設計にしたい」といった局面では、税理士の関与が結果を大きく左右します。役所相談で全体像を掴むことは有益ですが、税額は“考え方”ではなく“数字と根拠”で決まり、ミスがあると追徴や延滞税などのリスクにもつながります。

また、相続税申告は期限(相続開始から10か月)があり、財産評価・特例適用・遺産分割の確定など、スケジュール管理も重要です。ここからは、税理士に相談することで得られる価値を、実務に即して3つに分けて解説します。

相続税対策

税理士に相続相談をする最大の理由は、申告書を作るだけでなく「相続税を適正に、そして必要以上に払いすぎない形に整える」ための対策まで含めて提案を受けられる点です。相続税は、財産評価の方法や特例の適用可否で税額が変わり得ます。不動産が絡む場合は評価の検討項目が増え、預貯金中心の相続より難易度が上がります。

役所の無料相談で得られるのは一般的な流れの説明が中心になりやすい一方、税理士へ正式に相談すれば、財産の棚卸しから概算税額の試算、申告に必要な資料の収集計画、特例の適用可能性の検討など、具体的なアクションに落とし込めます。「相続税がかかりそう」と感じた時点で早めに税理士へつなぐと、期限ギリギリで慌てるリスクを下げられます。

二次相続対策

相続で見落とされがちなのが「二次相続」の視点です。たとえば一次相続で配偶者が多く相続すると、配偶者の相続税が軽くなる場面はありますが、その後に配偶者が亡くなった二次相続で子の負担が増えることがあります。例えば、一次相続だけで最適化すると、二次相続で“想像以上の税額”になって後悔するケースもあります。

税理士に相談すると、一次相続と二次相続をセットで見た分割案や、将来の資産移転まで含めた設計を検討しやすくなります。役所相談では時間や情報量の制約があり、二次相続まで踏み込んだシミュレーションは難しいことが多いため、「家族構成的に二次相続が近そう」「財産が大きい/不動産が多い」といった場合は、早めに税理士へ相談する価値が高いです。

各専門家同士で連携をとり、相続手続きをしてもらえる

相続は、税務(相続税申告)だけで完結しないことが多く、不動産があれば登記、トラブルがあれば法律対応、書類作成が必要なら行政手続き、といった形で複数分野が連動します。相続に強い税理士は、司法書士や弁護士など他士業と連携していることが多く、相談者が自力で各専門家を探して段取りを組む負担を減らせます。
役所相談は“入口”としては優秀ですが、実際に手続きを完走するには、書類の整合性、期限管理、関係者調整が必要になります。ワンストップで進めたい、ミスを避けたい、家族間の説明も含めて伴走してほしいという場合には、連携体制のある税理士へ相談することで、全体のストレスと手戻りを減らしやすくなります。

区役所・市役所でも相続相談は可能で、多くの場合は自治体が開催する無料相談会を利用します。無料で専門家の一般的な助言を受けられるため、「何から始めるべきか」「誰に相談すべきか」「期限のある手続きは何か」など、初動の不安を整理する入口としてとても有用です。

その一方で、相談は短時間・回数制限があることが多く、個別事情に踏み込んだ判断、書類の添削や作成代行、その場での正式依頼には向きません。相続税が絡みそう、財産評価が難しい、二次相続まで含めて損しない分割にしたい、手続きを丸ごと進めたい、といった場合は、早めに税理士へ相談することで、期限管理・節税・他士業連携まで含めてスムーズに進められます。
役所相談は“道案内”、税理士相談は“実行と最適化”。この役割分担で使い分けると、相続の不安が現実的な手順に変わっていきます。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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