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法定相続情報証明制度で戸籍謄本の束が1枚に!メリットと注意点、手続きの流れを解説
2025/02/28 相続手続

目次
法定相続情報証明制度とは
法定相続情報証明制度とは、相続手続きを簡素化するために2017年5月に導入された制度です。これまでの相続手続きでは、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本の束を、銀行や不動産登記など複数の窓口に何度も提出する必要がありました。特に被相続人が転居を繰り返していた場合、戸籍の収集は煩雑で時間と費用がかかる作業でした。 この制度では、相続人が被相続人と相続人の戸籍謄本等を法務局に一度提出すると、「法定相続情報一覧図の写し」という1枚の書類が交付されます。この書類には登記官の認証が付され、相続人が誰であるかを公的に証明する役割を果たします。 この一覧図の写しは、各種相続手続き(不動産登記、預貯金の払い戻し、相続税申告など)に利用できるため、手続きの簡素化と迅速化が実現します。また、一覧図の写しは無料で再交付を受けられるため、同時に複数の相続手続きを進めることも可能になりました。 ただし、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、日本の戸籍謄本等を提出できない場合は、この制度を利用することができません。利用できるのは、被相続人の相続人(またはその相続人)と、申出人から委任された代理人に限られています。法定相続情報証明制度のメリット
法定相続情報証明制度は、特に財産の種類が多く手続きを効率的に進めたい方に大きな利点をもたらします。具体的なメリットは以下の3つです。①膨大な戸籍謄本が1枚の書類に集約される
この制度の最大の利点は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本の束が「法定相続情報一覧図の写し」という1枚の書類で代用できることです。例えば、亡くなった方の預金口座が複数の金融機関にある場合、従来であれば各銀行に分厚い戸籍の束を持参する必要がありましたが、この制度を利用すれば、A4サイズ1枚の書類だけで手続きが可能になります。 特に被相続人が転居を繰り返し本籍地を移動していた場合は、戸籍謄本の束が非常に厚くなることがあります。この書類の束を各窓口に持ち運ぶ手間が大幅に軽減されるため、相続人の身体的・精神的負担が減少します。事前に各窓口がこの制度に対応しているか確認しておくことで、手続きをよりスムーズに進められます。②書類収集の費用を大幅に削減できる
従来の相続手続きでは、原本還付(提出した書類の原本を返却してもらうこと)を繰り返しながら各窓口を回るか、あるいは戸籍謄本を複数部取得して同時に手続きを進める必要がありました。特に被相続人や相続人が遠方に住んでいた場合、戸籍謄本の取得は郵送での請求となり、時間と費用がかさみます。 法定相続情報証明制度を利用すれば、戸籍謄本等は原則1部だけ取得すれば済むため、書類取得にかかる費用を大幅に削減できます。さらに、「法定相続情報一覧図の写し」は必要な枚数を無料で再交付してもらえるため、コスト面でも非常に効率的です。各手続き窓口での制度対応状況を事前に確認することで、無駄な費用を抑えることができます。③複数の相続手続きを同時並行で迅速に進められる
法定相続情報証明制度の大きな特徴は、「法定相続情報一覧図の写し」を複数枚無料で再交付できる点です。これにより、不動産登記、銀行口座の解約、相続税の申告など複数の相続手続きを同時並行で進めることが可能になります。 従来の方法では、ある窓口での手続きが完了し戸籍の束が返却されてから次の窓口へ行く必要があったため、手続き全体に長い時間を要しました。特に不動産登記の申請中は原本が長期間戻ってこないこともあります。この制度を利用すれば、手続きにかかる総時間を大幅に短縮でき、相続人の負担を軽減できます。 ただし、法定相続情報証明制度の手続き自体に1〜2週間程度かかるため、銀行口座の凍結解除など急を要する手続きがある場合は、従来の方法で進めた方が良い場合もあります。相続手続きの全体像を把握し、各窓口の制度対応状況を確認した上で、最も効率的な方法を選択することが重要です。法定相続情報証明制度の注意点
法定相続情報証明制度には多くのメリットがありますが、利用する際には以下の3つの注意点を把握しておく必要があります。国籍による利用制限がある
この制度の大きな制約の一つは、日本国籍に関する制限です。被相続人(亡くなった方)や相続人が日本国籍を持っていない場合、日本の戸籍謄本等を提出することができないため、この制度を利用することができません。 国際結婚が増加している現代社会では、相続人の中に外国籍の方がいるケースも珍しくありません。そのような場合は、従来通りの相続手続き方法を取る必要があります。制度利用を検討する際には、まず全ての関係者の国籍を確認することが重要です。相続税申告時には養子の表示が必要
平成30年4月1日以降の相続税申告書では、戸籍謄本等の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を添付することが認められています。しかし、相続税計算において養子の人数が税額に影響するため、一覧図の「子」の続柄表示には注意が必要です。 相続人に養子がいる場合、一覧図には「子(養子)」のように養子であることを明記しなければなりません。単に「子」と記載されただけの一覧図は、相続税申告書の添付書類として認められないことがあります。さらに、養子がいる場合は、その養子の戸籍も法務局に提出する必要があります。相続税申告を予定している場合は、この点に特に注意して一覧図を作成しましょう。全ての機関が対応しているわけではない
法定相続情報証明制度は比較的新しい制度であるため、全ての金融機関や行政機関が対応しているわけではありません。制度が導入されて数年経過していますが、特に地方銀行や証券会社、自動車の名義変更手続きなどでは、従来通りの戸籍謄本等の提出を求められる場合があります。 大手都市銀行や主要な金融機関では対応していることが多いですが、利用前には必ず各窓口に電話やウェブサイトで確認することをお勧めします。確認せずに法定相続情報一覧図の写しだけを持参すると、再度戸籍謄本等を取得し直す手間が発生してしまいます。 また、法定相続情報一覧図の作成自体にも手間がかかります。家系図のような形式で作成する必要があり、登記所への申出準備にも時間を要します。相続手続きが少ない場合は、この制度を利用するメリットが少ないケースもあります。手続きの数や複雑さを考慮して、本制度の利用是非を判断することが大切です。法定相続情報証明制度の手続きの流れ
法定相続情報証明制度を利用するための手続きは、以下の流れで進めます。①必要書類の収集
まず最初に、法務局への申出に必要な書類を揃えます。具体的には以下の書類が必要です。- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本等
- 申出人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 法定相続情報一覧図
- 申出書
②法定相続情報一覧図の作成
申出人自身が法定相続情報一覧図を作成する必要があります。これは家系図のような形式で、次の情報を記載します。- 被相続人の氏名、生年月日、本籍地、住所、死亡年月日
- 各相続人の氏名、生年月日、続柄、住所
③申出書の作成と法務局への提出
申出書に必要事項を記入し、集めた書類と一緒に法務局(登記所)に提出します。申出先の法務局は、以下のいずれかから選択できます。- 被相続人の死亡時の本籍地を管轄する法務局
- 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局
- 申出人の住所地を管轄する法務局
- 被相続人名義の不動産所在地を管轄する法務局
④法定相続情報一覧図の写しの受け取り
提出された書類を登記官が確認した後、登記官の認証文が付された法定相続情報一覧図の写しが交付されます。同時に、提出した戸籍謄本等の原本は返却されます。手続き完了までの期間は、登記所の混雑状況にもよりますが、一般的に1〜2週間程度かかります。⑤相続手続きでの活用
交付された法定相続情報一覧図の写しは、不動産の相続登記、預貯金の払戻し、相続税申告など、各種相続手続きで活用できます。一覧図の写しは無料で再交付を受けられるため、必要な枚数を取得しておくと便利です。 ただし、すべての金融機関や行政機関がこの制度に対応しているわけではないので、各窓口に事前に確認することをお勧めします。制度に対応している窓口では、この一枚の書類だけで「戸籍の束」に代わる証明が可能になります。 法定相続情報証明制度は、複数の戸籍謄本を「法定相続情報一覧図の写し」1枚に集約し、相続手続きを効率化する制度です。特に複数の相続財産がある方に有効で、手続きの負担と費用を大幅に軽減できます。制度利用には初期準備が必要ですが、その後の手続きが簡素化されます。ただし、対応していない機関もあるため、事前確認が重要です。状況に応じて最適な方法を選びましょう。この記事の監修者

税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。