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貸駐車場の土地評価はどうやって決められる?駐車場の相続税評価について
2025/03/25 相続手続

目次
相続において駐車場用地の評価は、その利用形態によって大きく異なり、相続税額に直接影響します。駐車場は一見単純な不動産に思えますが、税法上はその運営主体、設備投資の負担者、契約形態などによって評価方法が変わる複雑な資産です。そこで今回は、駐車場の相続税評価について、所有者自身が経営している場合と借主が設備投資をしている場合など、具体的なケース別に解説します。適切な評価方法を理解することで、相続税の適正な計算や節税対策にもつながりますので、駐車場を所有されている方は参考にしてください。
土地の相続税評価について
土地の相続税評価額は、現況の利用状況に基づいて9種類に分類されます。具体的には次の区分があります。
- 宅地
- 田
- 畑
- 山林
- 原野
- 牧場
- 池沼(ちしょう)
- 鉱泉地
- 雑種地
これらの分類を「地目(ちもく)」と呼びます。重要なのは、登記簿上の地目ではなく、課税時期における実際の土地利用状況によって判定される点です。
駐車場の相続税評価について
駐車場として利用されている土地は、通常「雑種地」に分類され、「一団の雑種地」として評価されます。雑種地の評価額は個別の状況によって異なりますが、一般的には周辺の類似した土地の1平方メートルあたりの価額を基準として算出されます。この際、位置や形状などの条件の違いを考慮した上で評定された価額に、雑種地の面積を乗じて計算します。 実際の評価においては、駐車場の具体的な利用形態も重要な判断材料となります。例えば、単なる青空駐車場(更地状態)として貸し付けているのか、あるいは土地を業者に貸し付け、業者がアスファルト舗装や各種設備を設置しているのかなど、貸付状況によって評価方針が異なります。これらの状況を詳細に検討した上で、適切な相続税評価額が決定されます。
貸主がアスファルト舗装や駐車場設備の設置をしている場合
土地所有者自身が駐車場経営を行う場合、その相続税評価は「自用地(じようち)」として取り扱われます。これは、駐車場経営においては単に自動車の保管場所を提供する契約であり、土地そのものの利用権を与える賃貸借契約とは本質的に異なると税法上では解釈されているためです。
この「自用地」としての評価は、土地をそのままの更地状態で駐車場として使用している場合(いわゆる青空駐車場)でも、土地所有者自らがアスファルト舗装やフェンス、区画線、精算機などの設備を設置している場合でも変わりません。いずれのケースでも、駐車スペースの利用者は土地自体に対する使用権を持たず、単に車両の一時的な保管サービスを受けているにすぎないと考えられるからです。
特に注目すべき点として、土地所有者自らがアスファルト舗装や砂利敷きなどの工事を施している場合は、その土地は「構築物の敷地」として利用されていると判断されます。この場合、一定の要件を満たせば、相続税の「小規模宅地等の評価減の特例」が適用される可能性があります。この特例が適用されると、最大で評価額を50%減額することができ、相続税負担の大幅な軽減につながります。
駐車場経営を行っている土地の相続においては、「自用地」としての評価と「小規模宅地等の評価減の特例」の適用可能性を踏まえた相続税対策が重要です。特例適用のためには事業用資産としての要件を満たす必要があるため、駐車場の経営実態や管理状況を適切に把握・記録しておくことをおすすめします。
土地を借りている者がアスファルト舗装等の設置をしている場合
土地所有者が土地を事業者に貸し付け、借主である事業者がアスファルト舗装や駐車場設備(区画線、フェンス、精算機など)を設置している場合、相続税評価上は「土地の賃貸借」として取り扱われます。このケースでは、土地所有者自身が駐車場経営をしている場合とは異なり、その土地の自用地評価額から賃借権の価額を控除した金額が相続税評価額となります。
具体的な計算式は以下のとおりです。
駐車場の評価額 = 自用地の価額 - 賃借権の価額
この場合の賃借権の価額は、その権利の性質によって2つのパターンに分かれます。
賃借権の登記がある場合 / 権利金や一時金の支払いがある場合 / 堅固な構築物の所有を目的とする場合
賃借権の登記があるもの、権利金や一時金の支払いがあるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどは、自用地評価額に賃借権の残存期間に応じた割合を乗じた額となります。例えば、残存期間が5年以下なら5%、5年超10年以下なら10%、10年超15年以下なら15%、15年超なら20%が控除割合となります。
上記以外の一般的な賃借権の場合
上記以外の一般的な賃借権の場合は、自用地評価額に残存期間に応じた割合の半分を乗じた額が控除されます。例えば、残存期間が15年超の場合は10%の控除となります。具体的には、自用地評価額が1億円で借地権の残存期間が15年超であれば、1,000万円が控除され、相続税評価額は9,000万円となります。
このように借主が設備投資を行っている土地も、構築物の敷地として利用されているため、要件を満たせば小規模宅地の評価減の特例が適用できる可能性があります。これにより、さらなる相続税の軽減が期待できます。
駐車場用地の相続税評価は、その利用形態によって「自用地」として評価される場合と「賃借権付き土地」として評価される場合に大別されます。土地所有者自身が駐車場経営を行う場合は自用地評価、借主が設備投資を行っている場合は賃借権を控除した評価となります。特に重要なのは、どちらの場合も「小規模宅地等の評価減の特例」が適用できる可能性があるという点です。この特例適用の有無で相続税額が大きく変わるため、駐車場の運営形態や契約内容を相続税の観点からも検討することが賢明です。相続対策としては、契約書の整備や経営実態の記録保持など、事前の準備が重要となります。
この記事の監修者

税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。