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相続税のお尋ねが届いたら?その意味と正しい対応をわかりやすく解説
2025/05/29 相続手続

目次
身近な人が亡くなると、相続に関する手続きが始まります。そのなかで、ある日突然、税務署から「相続税についてのお知らせ」や「相続税申告等についてのご案内」といった文書が届くことがあります。これが、いわゆる「相続税のお尋ね」です。
突然の通知に驚いたり、不安になったりする方も少なくありません。しかし、これは必ずしも「脱税を疑われている」というものではありません。この記事では、この「相続税のお尋ね」の意味や届く理由、そして適切な対応方法について、初めての方でも理解できるよう、わかりやすく解説します。
「相続税のお尋ね」とは?──税務署からの“確認のお願い”
「相続税のお尋ね」とは、相続税の申告が必要となる可能性がある相続人に対して、税務署から送られる文書です。正式には「相続税についてのお知らせ」または「相続税申告等についてのご案内」という名称で届きます。
これは法的に申告義務があるかどうかを事前に確定するものではなく、相続税の申告が必要かどうかを判断するための“予備調査”のような位置づけです。文書には「相続税の申告要否検討表」が同封されており、相続財産の内容を記載して返送することが求められます。
どうして届く?──税務署が相続情報を把握するしくみ
相続が発生すると、死亡届が市区町村へ提出されます。その情報は戸籍法および相続税法に基づき、税務署へと通知される仕組みになっています。通知を受けた税務署は、故人の過去の確定申告履歴や保険金の支払記録、不動産の登記情報、金融資産の照会などを通じて、ある程度の財産状況を把握することが可能です。
その結果、相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えていると判断された場合、「相続税のお尋ね」が送付されます。
「お知らせ」と「ご案内」の違い
2025年現在、税務署から送られてくる文書には主に次の2種類があります。
- 相続税についてのお知らせ:広く相続税の申告が想定される相続人に対して送られる案内
- 相続税申告等についてのご案内:より申告が必要と見なされている相続人向けの文書
どちらも無視は避け、内容を確認したうえで適切に対応することが重要です。
お尋ねが届くタイミングと対応のポイント
お尋ねが届くタイミングによって、対応方法が異なります。以下を参考に、対応を進めましょう。
相続開始から半年~8か月後に届く場合
相続税の申告期限は、原則として相続開始から10か月以内です。お尋ねが6~8か月後に届いた場合、期限がすでに迫っている可能性があります。申告の必要があるとわかったら、速やかに準備を進めましょう。
数年後に届いた場合
相続開始から2年、3年と経過した後にお尋ねが届くこともあります。このケースでは、税務署が「申告漏れの可能性」を疑っている場合があります。早急に当時の財産状況を洗い直し、必要であれば期限後申告を行いましょう。
回答しなければいけない?──義務ではないが、無視はNG
「相続税のお尋ね」は法律上の強制力はありません。したがって、回答義務はありません。ただし、無視することはおすすめできません。
税務署としては「返答がない=何かを隠しているかもしれない」と考える可能性があるため、将来的に税務調査が行われるリスクを高めることになります。
すでに税理士に相談し申告準備を進めている場合でも、「お尋ね」にも一言添えて返送しておくと、税務署との信頼関係を築くうえでプラスに働きます。
回答の方法:申告要否検討表の書き方
文書に同封されている「申告要否検討表」には、以下のような情報を記載します。
- 被相続人の基本情報(氏名、生年月日、死亡日、職業)
- 相続人の人数・続柄・氏名
- 被相続人名義の不動産(所在地、面積、評価額など)
- 預貯金・現金・株式などの金融資産
- 生命保険・死亡退職金(受取額)
- その他の資産(自動車、貸付金、美術品など)
- 債務と葬儀費用(借入金、未納税など)
- 生前贈与(相続時精算課税や3年内贈与など)
よくある質問:相続税のお尋ねで不安なポイントを解消
ここでは、相続税のお尋ねにまつわる、よくある質問をご紹介いたします。
Q1. 回答期限を過ぎてしまったらどうなる?
「相続税のお尋ね」の文書には、たいてい回答期限が設けられています。しかし、この期限は法的義務ではなく、あくまで“目安”です。提出が間に合わなかったからといって即座に罰則が科されるわけではありません。
ただし、申告そのものの期限(相続開始から10か月以内)を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税が発生します。誠実に対応することで、税務署との信頼関係を損なわずに済みます。
Q2. お尋ねが来なかった=申告不要と考えてよい?
これは非常に危険な誤解です。「お尋ね」が届かない場合でも、相続税の申告が必要なケースは十分にあります。税務署が把握できていない財産があったり、調査のタイミングによっては通知が漏れてしまうこともあるためです。
Q3. 申告不要のつもりだったが、後から財産が見つかったら?
申告後に新たな財産が見つかった場合は、「修正申告」を行う必要があります。申告せずに放置すると、税務署から「更正処分(税務署による税額決定)」を受ける可能性があります。
Q4. 書き方がわからない。誰に相談すればいい?
所轄の税務署へ電話で問い合わせるか、財産が多い場合は相続専門の税理士への相談をおすすめします。初回相談が無料の事務所もあります。
実際にあった「相続税のお尋ね」の事例
Aさんのケースでは、父親の遺産に不動産や金融資産がないと思っていたものの、「お尋ね」を受けて再調査した結果、地方に収益不動産があり、基礎控除を超えていたことが判明。急遽税理士に依頼して申告しました。 「お尋ね」は相続財産を見直す“きっかけ”としても重要です。
相続税対策は「生前」からの準備も大切
相続税対策として以下の方法が有効です。
- 生前贈与の活用(暦年贈与、相続時精算課税)
- 遺言書の作成
- 財産の目録作成と評価方法の明確化
- 生命保険や信託の活用
最後に:お尋ねをきっかけに「備え」を考える
「相続税のお尋ね」は、単なる事務的な通知ではなく、今後の相続全体を見直す重要なタイミングでもあります。焦らず、誠実に、そして早めに動くことが何よりのリスク回避につながります。 不安な点があれば、専門家への相談をためらわず、「自分の家の相続」に合った最善の対処法を見つけてください。
この記事の監修者

税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。