いとこの相続はできる?遺言・特別縁故者・相続税の基礎知識
     

相続コラム

いとこの相続はできる?遺言・特別縁故者・相続税の基礎知識

2025/06/26 相続手続

いとこは、私たちにとって血縁関係がある親しい存在ですが、相続の場面ではどのような立場になるのでしょうか。日頃お世話になったいとこに財産を残したい、あるいはいとこの遺産を受け取りたいと思うこともあるかもしれません。しかし、民法ではいとこは法定相続人に含まれておらず、原則として相続権はありません

そこで本記事では、いとこの遺産を受け取る方法や注意点、税金の扱いについて解説します。

いとこは相続人ではない

民法では、亡くなった方(被相続人)の財産を相続できる人、すなわち法定相続人が定められています。

法定相続人となるのは、配偶者のほか、第1順位として子や孫などの直系卑属、第2順位として父母や祖父母などの直系尊属、そして第3順位として兄弟姉妹です。この順位に従い、上位の相続人がいない場合にのみ次の順位の人が相続人となります。しかし、いとこはこれらの範囲に含まれず、法定相続人にはなれません。

たとえ日頃から介護や生活の支援をしていたとしても、民法上は相続の権利が認められないのです。そのため、いとこに財産を残したいと考える場合は、遺言書を作成しておく必要があります。

遺言書がなければ、いとこは財産を相続できず、遺産は国庫に帰属することになります。いとこが身近で大切な存在であれば、元気なうちにしっかりと相続の意思を形にしておくことが大切です。

いとこが遺した財産はどうなる?

いとこが亡くなり、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹といった法定相続人がいない場合、その財産は最終的に国に納められることになります。ただし、その前に「特別縁故者」に財産が分け与えられる可能性があります。

特別縁故者とは、亡くなった方と生計を共にしていた人、療養や介護に尽力した人、または特別に親しい関係にあった人を指します。

たとえば、いとこと同居していたり、生活を支えたり、介護をしていた場合には、特別縁故者として認められることがあります。

手続きの流れとしては、まず家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、相続人の捜索や借金の清算を行います。

そのうえで相続人がいないと確定した場合、特別縁故者への分与が審査され、残った財産は国に帰属します。

いとこの遺産を相続するには

いとこは法律上、法定相続人には含まれていません。そのため、たとえ生前に親しい関係にあったとしても、いとこの遺産はそのままでは相続することができません。しかし、一定の条件を満たすことで、いとこの遺産を取得できる可能性があります。

ここでは、その方法を2つご紹介します。

いとこに遺言書を書いてもらう

いとこの遺産を確実に受け取るための一番の方法は、いとこに遺言書を用意してもらうことです。

遺言は、亡くなった人の最終意思を尊重する仕組みで、原則として法定相続人や相続順位よりも効力が優先されます。

遺言書には、自筆証書遺言や公正証書遺言などがありますが、公正証書遺言は公証人が作成を手助けするため、記載ミスや形式の不備による無効のリスクを避けることができます。また、遺言での遺贈には、特定の財産を渡す「特定遺贈」と、財産全体の割合を定める「包括遺贈」があり、包括遺贈の場合は負債も引き継ぐことになるため注意が必要です。

特別縁故者として申し立てる

もし遺言書がない場合、特別縁故者として家庭裁判所に申し立てる方法があります。

特別縁故者とは、亡くなった方と生計を共にしていた人、療養看護をしていた人、その他特別な関係があった人を指します。たとえば、いとこと同居していたり、生活の支援や介護をしていた場合、特別縁故者として認められる可能性があります。

相続財産管理人が選任され、相続人の捜索や債務の清算が行われた後、特別縁故者に財産が分与されることになります。ただし、相続人捜索の公告期間満了後3か月以内という申立期限があるため、早めに手続きを進めることが大切です。

特別縁故者として認められないケース

特別縁故者として財産の分与を受けるには、亡くなった方(被相続人)と特別な関係があったことが前提となります。たとえば、長年同居し生活の面倒を見ていたり、療養看護に尽力したりといった、家族同然の深い関わりが必要です。

単に親戚だから、いとこだからという理由だけでは特別縁故者とは認められません。また、たとえ療養看護をしていたとしても、その対価として十分な報酬や費用を受け取っていた場合には、特別縁故者に該当しない可能性があります。さらに、葬儀を手配したり費用を負担したといった死後のみの関わりだけでは、原則として認められません。ただし、死亡後も事実上の後継者として祭祀を主宰したり、財産管理を継続した場合など、例外的に特別縁故者と認められた事例もあります。

特別縁故者としての認定には、被相続人との具体的で継続的な関わりが重要です。

いとこの財産を相続すると税金が2割加算

いとこの財産を相続する場合、税金の面で注意が必要です。

いとこは法定相続人ではないため、たとえ特別縁故者として財産の分与を受けた場合でも、相続税法上は「遺贈を受けた者」とみなされます。このため、相続税の基礎控除額は「3,000万円のみ」となり、法定相続人の場合に認められる「600万円×相続人の数」の加算はありません。さらに、いとこのように被相続人の一親等の血族(子や親など)や配偶者以外の人が財産を取得した場合、相続税額に2割相当額が加算されるルールとなっています。

この2割加算は納税額に大きな影響を及ぼすため、想定以上の負担になることもあります。

いとこの財産を受け取る予定がある場合や特別縁故者として申立てを考える場合は、税金面も含めて早めに専門家へ相談することが大切です。

いとこの財産を相続するには、遺言書を準備してもらう、または特別縁故者として申し立てるといった方法が必要です。

どちらの場合も手続きや税金で注意すべき点が多く、特に税額が2割加算されるなど負担が大きくなる可能性があります。

大切な財産を希望通りに承継するためには、早い段階から遺言や相続の準備を進め、必要に応じて専門家に相談することが重要です。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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