故人の生命保険がわからない|生命保険契約照会制度を利用するには?
     

相続コラム

故人の生命保険がわからない|生命保険契約照会制度を利用するには?

2025/07/30 相続手続

親が亡くなり、相続の手続きを進める中で「そういえば、保険に入っていたような話を聞いたことがある」という記憶がふとよみがえる。しかし保険証券は見当たらず、どの会社と契約していたのかもわからない――。こうしたケースは、今や決して珍しいことではありません。

特に一人暮らしだった親の場合、家族に契約内容を伝えていないことも多く、保険の請求先を特定できずに時間だけが過ぎていくことも。そんなときに活用できるのが「生命保険契約照会制度」です。

生命保険契約照会制度とは?

保険の契約先がわからない場合、以前は一社ずつ保険会社に問い合わせるほかありませんでした。しかし、現在は生命保険協会が提供する「生命保険契約照会制度」によって、よりスムーズな調査が可能となっています。

制度の概要と目的

この制度は、亡くなった方や認知症の方が生命保険に加入していたかどうかを、生命保険協会が一括して調査してくれる仕組みです。協会に申請を行うことで、加盟している各保険会社に情報照会がかけられ、契約の有無についてまとめて回答が返ってきます。

制度の目的は、情報が不明なまま保険金が請求されず時効を迎えてしまうような事態を防ぎ、正当な受取人がスムーズに手続きを進められるようにすることです。

どんなときに使う制度なのか

この制度が役立つのは、故人の保険証券が見当たらず、どの保険会社と契約していたかまったく分からない場合です。口座の引き落とし履歴もなく、税務書類にも手がかりがない。そんな「完全に手詰まり」の状態でも、制度を通じて契約の有無を一括確認することができます。

制度の開始時期と背景(2021年7月スタート)

この制度は、2021年7月から正式に開始されました。背景には、高齢化の進展により、契約内容が家族に共有されていないケースの増加がありました。独居高齢者の死亡、認知症による記憶の曖昧化などをきっかけに、「誰も把握していない保険契約」が社会問題化しつつあります。これを受けて、制度化が実現しました。

この制度を利用できるのはどんなとき?

制度の利用には条件があります。誰でも自由に使えるわけではなく、照会対象者の状態と申請者の立場によって制限があります。

利用できる3つのケース

生命保険契約照会制度は、以下の3つの状況で利用することが認められています。

死亡した場合
最も多いのが、亡くなった人の契約状況を確認するケースです。相続人や遺言執行者が申請できます。

認知能力が低下した場合
認知症などで本人が自分の契約内容を把握できなくなった場合も、家族が代わりに照会することが可能です。

災害による死亡・行方不明
自然災害や事故などで死亡または行方不明となった場合、災害関連の申請として、無料で制度を利用できます。

利用は必須?任意?

この制度の利用は義務ではなく、「必要に応じて使う」任意の手段です。保険証券や通帳の記録が残っていて、保険会社が判明している場合は、直接会社に連絡するほうが迅速です。あくまで「契約先が不明」「情報が一切ない」といった緊急時に活用するのが理想です。

生命保険契約照会制度でできること・できないこと

この制度を使えば、幅広く保険会社を調査できますが、できることとできないことをきちんと理解しておく必要があります。

【できる】契約の有無の一括照会

最も大きな利点は、複数の保険会社に一括で照会をかけられる点です。生命保険協会に加盟している42社(2025年現在)に対して、個別の問い合わせをすることなく調査ができます。

【できない】保険金の金額や受取人の確認、請求手続き

ただし、この制度はあくまで「契約があるかないか」を確認するためのもので、契約内容の詳細までは教えてもらえません。契約が判明したあとは、各保険会社に直接連絡し、別途書類を提出して内容の確認や保険金の請求を行う必要があります。

制度を使う前に確認すべきこと

照会制度を使う前に、まずは自力で調査できる手段を試してみましょう。制度を使わずに済めば、手数料も手間も省けます。

通帳や確定申告書をチェック

通帳の引き落とし履歴に「保険料」と書かれていれば、それが契約先を特定するヒントになります。加えて、故人が確定申告をしていた場合は、生命保険料控除の欄を確認してみましょう。

保険証券・会社からの郵送物の確認

封筒、カレンダー、ノベルティなど、保険会社から届いたものが保管されている可能性もあります。遺品整理の際は、細かいものまでよく確認してみましょう。

家族に話を聞いてみる

生前の会話の中で、保険の話題が出ていた可能性があります。兄弟姉妹や近しい親族に話を聞くことで、意外な情報が得られることもあります。

それでもわからなければ照会制度へ

上記をすべて確認しても契約先が特定できない場合、制度の出番です。時効があることを念頭に、なるべく早めに申請を行いましょう。

利用できる人と必要書類

誰でも自由に使える制度ではないため、申請できる人や提出書類には厳格なルールがあります。

利用できる人(法定相続人、遺言執行者など)

制度を使えるのは、亡くなった方の法定相続人や、正式な遺言執行者に限られます。第三者が勝手に申請することはできません。

代理人になれる職種(弁護士・司法書士等)

手続きが難しい場合、代理人に依頼することも可能です。ただし、代理人として認められるのは、弁護士、司法書士、行政書士などに限られ、税理士は代理人にはなれません。

必要な書類一覧(戸籍・本人確認書類など)

申請には、次のような書類が必要です。

契約が見つかったら何をすればいい?

契約の存在が確認できたら、次は具体的な請求や手続きに移っていく必要があります。

保険会社への連絡方法

照会結果に記載された保険会社に直接連絡を入れ、契約の詳細について問い合わせましょう。その際、「生命保険契約照会制度を使った」と伝えるとスムーズです。

保険金請求の可否確認

契約が残っていても、すでに保険金が支払われていたり、失効していることもあります。まずは契約が有効か、保険金の請求権があるかを確認しましょう。

必要に応じた契約者変更手続き

契約者が故人で、被保険者が別の人の場合には、契約者の名義を相続人に変更する必要があります。これも保険会社の案内に従って行います。

相続税申告にも注意

生命保険金には一定の非課税枠(法定相続人1人あたり500万円)がありますが、それを超える場合は課税対象となります。不明点がある場合は、税理士など専門家に相談すると安心です。

まとめ|照会制度は“最後の砦”。困ったときは専門家に相談を

生命保険契約照会制度は、「保険に入っていたかもしれないけど、まったくわからない」という状況で活躍する頼れる制度です。契約の有無を一括で調べられるのは大きなメリットですが、内容の照会や請求は別途行う必要があります。

まずは自力での確認を試み、それでも不明なら制度を活用しましょう。そして、不安や疑問が残る場合は、相続に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
大切な保険金を確実に受け取るために、手続きを一つひとつ丁寧に進めていきましょう。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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