ゴルフ会員権は相続税の対象?評価方法をケース別にわかりやすく解説
     

相続コラム

ゴルフ会員権は相続税の対象?評価方法をケース別にわかりやすく解説

2025/07/30 相続手続

「父が生前にゴルフに熱中していたが、残された会員権に価値はあるのか?」「バブル時代に購入したゴルフ会員権は、今も財産として扱われるのか?」こうした疑問は、相続の手続きに直面して初めて浮かんでくることが少なくありません。

本記事では、ゴルフ会員権が相続財産に含まれるかどうか、そして相続税評価のポイントについて、ケース別に丁寧に解説します。

ゴルフ会員権とは

まずは「ゴルフ会員権」とは何かを整理しておきましょう。
ゴルフ会員権とは、ゴルフ場のクラブに所属する権利で、主に次の3つの形態があります。

預託金制
一定額をゴルフ場に預けることで会員となる制度。退会時などに返金されることがあります。

株主制
ゴルフ場を運営する会社の株式を所有することで会員資格が付与される制度。

プレー権のみ
譲渡や売却ができず、施設の利用権に限られる会員権。

いずれもゴルフ場によって内容や規約が異なりますが、会員権には一定の財産的価値が認められるケースもあります。

さらに、ゴルフ会員権は相続人にとって必ずしも「ゴルフを続けるための権利」ではなく、経済的価値のある資産として取り扱われます。仮に相続人がゴルフをしない場合でも、相続放棄をしない限り、その財産価値を相続することになります。売却や放棄を検討する際には、会員権の譲渡条件や退会規約などをよく確認し、実際に手元に残る金額を試算することが重要です。

ゴルフ会員権は相続財産に含まれる

ゴルフ会員権は、亡くなった方が所有していた場合、原則として相続財産に含まれます。財産評価基本通達でも、「市場で取引される財産」や「返還が見込まれる預託金」などについては課税対象として明記されており、税務上の財産として計上する必要があります。

ゴルフ会員権を相続する方法

相続人がゴルフ会員権を相続する場合、以下のようなステップを踏むことが一般的です。

ただし、ゴルフ場によっては名義書き換えを制限している場合や、そもそも譲渡・相続を認めていない「プレー権のみ」のケースもあるため、事前確認が欠かせません。

ケース別のゴルフ会員権の評価方法

ゴルフ会員権は、その種類や内容によって評価方法が大きく異なります。大きく「取引相場のある会員権」と「取引相場のない会員権」に分類され、それぞれ細かく評価の方法が分かれます。

ケース1. 取引相場のあるゴルフ会員権の評価方法

もっとも一般的なのが、市場で売買されている「取引相場のある」ゴルフ会員権です。評価額は以下の算式で算出されます。

取引価格 × 70% +(必要に応じて)預託金の評価額

これは、実際の売買価格に一定の評価補正をかけた金額が基準となる考え方です。

ケース1-1. 預託金あり、ただちに返還される会員権
このケースでは、取引価格に70%をかけた金額に、返還可能な預託金全額を加算して評価します。

例:取引価格100万円、預託金50万円の場合 → 100万円×70%+50万円=120万円

ケース1-2. 預託金あり、一定期間後に返還される会員権
返還まで期間を要する預託金は、「複利現価率」を用いて現在価値に換算します。

たとえば、5年後に返還される50万円の預託金で、複利現価率が0.85とすると、

評価額=取引価格×70%+50万円×0.85

年利率は国税庁が公表する利率に基づきます。

ケース1-3. 預託金はあるものの返還見込みがない会員権
預託金が存在しても、返還の可能性がないと判断される場合は、その金額は考慮せず、次の通り評価します。

評価額=取引価格 × 70%

つまり、実質的に「預託金なし」として扱います。

ケース2. 取引相場がない株主会員制のゴルフ会員権の評価方法

譲渡制限があり市場に流通しない会員権は、「取引相場なし」と分類され、より複雑な評価が求められます。

ケース2-1. 預託金制ゴルフクラブ会員権
預託金の返還がある場合、その金額をそのまま評価額とします。ただし、返還までに期間を要する場合は、複利現価率を使って現在価値を算出します。

ケース2-2. 株主制ゴルフクラブの会員権
このタイプは、「非上場株式」と同様の評価が必要です。純資産価額方式や類似業種比準方式を用いることが多く、専門的な判断が必要です。

個人での評価は難しいため、相続税に詳しい税理士への依頼が望ましいでしょう。

ケース2-3. 株主制+預託金制のゴルフクラブ会員権
株主としての評価額(非上場株式評価)に、預託金の評価額を加算して評価します。どちらの評価も見落とすと大きな課税漏れとなるため、丁寧な確認が求められます。

税務申告における留意事項とよくある誤解

ゴルフ会員権に関する相続でよくあるのが、「相続税の対象になると知らずに申告漏れとなってしまった」「名義変更の申請を怠っていたために無効とされた」といったトラブルです。特に名義書き換えには期限が設けられている場合もあり、申請の遅れが思わぬ損失につながることもあります。

また、相続税評価額と実際の売却価格には差がある場合が多く、「相続税を払ったが、売却時に思ったよりも安くなってしまった」という声もあります。こうしたギャップを避けるためには、税理士などの専門家と連携し、評価と売却の戦略を事前に検討しておくことが肝心です。

まとめ|ゴルフ会員権の相続を円滑に進めるために

ゴルフ会員権は相続財産に該当し、種類や取引状況に応じて評価方法が異なります。 中には数百万円の評価額となるケースもあり、申告漏れがあれば追徴課税のリスクもあります。

特に「取引相場がない」場合や「株主制」の会員権は評価が難解なため、無理に自己判断せず、早めに専門家へ相談することが大切です。

相続税の適正な申告とスムーズな手続きを進めるためにも、まずは故人が所有していたゴルフ会員権の種類や条件を正確に把握しましょう。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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