【遺産相続の手続き期限早見表】期限の短いものから順番に解説
     

相続コラム

【遺産相続の手続き期限早見表】期限の短いものから順番に解説

2025/12/23 相続手続

相続が発生すると、葬儀や役所手続き、銀行の名義変更、税務申告まで「やること」が一気に押し寄せます。しかも相続手続きには、法律・制度で期限が決まっているものが多く、うっかり遅れると「過料(罰金のようなもの)」「延滞税」「使えるはずの特例が使えない」などの不利益につながります。特に相続税は、申告と納付がセットで期限管理が必要なため要注意です。
この記事では、期限が短い順に、何を・誰が・どこへ・何を出すのかを“迷わない粒度”でまとめます。最初に早見表(一覧)で全体像をつかみ、各手続きのポイントで抜け漏れを防ぎましょう。

相続手続きにおける申告・書類提出などの期限一覧

相続の期限管理で大切なのは、「相続開始日(多くは死亡日)」から機械的に数えるだけでなく、“いつから起算するか”を押さえることです。たとえば、相続放棄は「死亡日から」ではなく、原則として“自己のために相続の開始があったことを知った時”から3か月です。相続税の申告も同様に「死亡を知った日の翌日から10か月」とされています。

また、期限日が土日祝に当たる場合は翌開庁日が期限になるのが一般的です(制度ごとに扱いが異なるため、最終確認は提出先で行いましょう)。

以下は、主要手続きを期限の短い順に並べた早見表です。

【7日以内】死亡診断書の受取

死亡診断書(または死体検案書)は、医師が死亡を医学的に証明する書類で、死亡届と一体になっているのが通常です。これを受け取れないと、死亡届の提出や火葬許可証の手続きに進めず、結果として多くの相続手続きが止まってしまいます。病院で亡くなった場合は、死亡当日〜翌日中に受け取るケースが多いとされています。
実務のコツは、提出前にコピーを複数取ることです。年金の停止、保険金請求、各種解約手続きなどで「死亡の証明」が求められ、都度コピー提出になる場面が多いからです。原本は基本的に死亡届として役所へ提出するため、手元に残るのはコピーになります。慌ただしい時期ですが、この一手間が後々の負担を大きく減らします。

【7日以内】死亡届の提出

死亡届は、戸籍に死亡の事実を反映させるための届出で、国内の場合、原則として「死亡の事実を知った日から7日以内」に市区町村へ提出します。法務省の案内でも提出時期が明示されています。
提出先は「死亡地」「本籍地」「届出人の所在地」の市区町村が基本で、葬儀社が代行することも多いですが、自分で出すことも可能です。
期限を過ぎると過料の対象になる可能性があるほか、何より火葬許可証や各種名義変更の“入口”が詰まります。提出後は、手続きで「戸籍謄本(除籍謄本)」が必要になっていくため、役所で取得方法も確認しておくとスムーズです。まずはここを最優先で取り組みましょう。

【7日以内】火葬許可証申請書の提出

火葬許可証は、火葬を行うために必要な許可で、一般的には死亡届の提出と同時に市区町村で手続きします。自治体によっては死亡届の提出により火葬許可証が交付され、別紙の申請を要しない運用もありますが、いずれにせよ「死亡届と同じタイミング」で動くのが現実的です。

法律上の“相続”とは少し系統が違う手続きですが、期限感としては葬儀日程に直結するため、実務上は最短で進みます。提出や交付は葬儀社が代行するケースも多い一方、家族が窓口で手続きする地域もあります。役所に行く前に、火葬場の予約状況や葬儀日程が決まっていると話が早いので、葬儀社と役割分担を確認しておくと安心です。

【14日以内】世帯主の変更届の提出

故人が世帯主で、同一世帯に残る世帯員がいる場合、世帯主変更届(世帯変更届)が必要になることがあります。住民基本台帳法の趣旨として、世帯(または世帯主)に変更があったときは14日以内に届け出るとされています。実際に自治体の案内でも、法令(住民基本台帳法25条)を引用しつつ「14日以内」と明記している例があります。

ただし、世帯員が1人だけになる場合など、ケースによって不要なこともあります。判断に迷ったら、住民票の構成(同一世帯かどうか)を手元で確認し、区市町村の窓口で「世帯主変更が必要か」を先に聞くのが確実です。後回しにされがちな手続きですが、健康保険や介護保険など、周辺の事務に影響することがあるため、早めに片付けておくと後の負担が減ります。

【14日以内】国民年金の受給停止手続き

故人が年金を受給していた場合、年金の受給停止手続きが必要です。手続きが遅れると、口座に年金が振り込まれ続けてしまい、あとから返還が必要になることがあります。年金の手続きは加入制度(国民年金・厚生年金)、マイナンバー連携の有無などで必要書類や提出要否が変わるため、まず年金事務所・年金相談センターへ連絡して「提出が必要か」を確認するのが最短です。

また、受給停止と並行して、未支給年金や遺族年金の可能性も検討します。止めるだけで終わらず、「受け取れるものがあるか」を同時に確認するのが実務のポイントです。死亡診断書(または戸籍)などの提示が求められることが多いため、最初の7日以内にコピーを確保しておくと手続きが流れ作業になります。

【3ヶ月以内】相続放棄・限定承認の申出

相続で最も“取り返しがつきにくい”期限の一つが、相続放棄・限定承認です。原則として、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に、単純承認(全部引き継ぐ)・相続放棄(全部放棄)・限定承認(プラスの範囲でマイナスも負担)のいずれかを選びます。

特に借金が疑われる場合、3か月を過ぎると「知らなかった」では済まず、原則として単純承認した扱いになるリスクが高まります。

実務ではこの3か月が、①相続人調査(戸籍収集)②財産調査(預金・不動産・借入)③方針決定、の勝負どころです。プラス財産しかないと決めつけず、信用情報、ローン、保証債務の有無なども視野に入れて調査しましょう。期限内に判断が難しいときは、家庭裁判所で熟慮期間の伸長が検討できる場合もあるため、早めの専門家相談が安全です。

【4ヶ月以内】準確定申告

準確定申告は、故人が亡くなった年の所得について、相続人が代わりに行う確定申告です。期限は原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」で、国税庁が明確に示しています。
対象になりやすいのは、個人事業主、不動産収入がある人、年金以外の所得がある人、医療費控除や損益通算が絡む人などです。
期限を過ぎると、延滞税・加算税などの負担が生じ得るため、「相続税より前に締切が来る税務手続き」として最優先で意識しましょう。相続人が複数いる場合、申告書には相続人全員の情報を付表に記載するなど、通常の確定申告より手間が増えます。
早い段階で、故人の源泉徴収票、控除証明、医療費領収書、事業帳簿の所在を集めておくと、4か月が現実的になります。

【10ヶ月以内】遺産分割協議・遺産分割協議書の作成

遺産分割協議そのものは「いつまでに必ず」と法律で一律に決まっているわけではありません。しかし実務上は、相続税の申告期限(10か月)に間に合わせることが強く求められます。なぜなら、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、相続税を大きく減らせる制度は、原則として「期限内申告」や「分割の確定」が前提になりやすいからです。相続税の期限が10か月である点は国税庁が明示しています。

協議を円滑にするコツは、①相続人と相続分の確定(戸籍で確認)②財産目録の作成(預金・不動産・保険・負債)③評価の見通し(不動産評価など)を、早い順に固めることです。揉めやすい家族ほど、「話し合い」より先に「見える化(一覧化)」が効きます。協議書は、銀行手続きや登記にも使う重要書類なので、書式や押印の要件は専門家(税理士・司法書士等)に確認するのが安全です。

【10ヶ月以内】預貯金等の解約・名義変更

預貯金の解約・名義変更自体に「10か月以内」という法律期限があるわけではありません。ですが、現実の相続では10か月以内に動くべき重要タスクです。理由はシンプルで、銀行が名義人の死亡を把握すると口座が凍結され、原則として相続手続きが完了するまで引き出しが難しくなるからです。

相続税が発生する場合、納付は原則として現金が必要なので(延納・物納は要件あり)、納付資金確保の観点でも早めが安全です。

なお、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で相続預金を払い戻せる制度(遺産分割前の払戻し)を使える場合があります。とはいえ、金融機関ごとに必要書類や手続きフローが異なるため、まずは各銀行の相続窓口へ連絡し、「遺言書の有無」「相続人の人数」「必要書類」を確認しましょう。遺産分割協議書、戸籍一式、印鑑証明などが揃うと一気に進むので、書類収集と並行で動くのがコツです。

【10ヶ月以内】相続税申告

相続税の申告期限は、原則として「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」で、国税庁が具体例付きで示しています。

期限までに申告しない、または過少申告になると、加算税・延滞税の対象になり得ます。さらに、特例の適用条件を満たせず税負担が増えるケースもあるため、相続税の対象になりそうなら“最初から”逆算で動くべきです。

実務の進め方としては、①課税対象かの判定(基礎控除を超えるか)②財産評価(特に不動産・非上場株)③債務控除・葬式費用④遺産分割(または分割見込み対応)⑤申告書作成、の順で進みます。相続人が多い、土地がある、名義預金が疑われる、過去の贈与がある場合は、10か月が短く感じられます。早い段階で税理士に「該当するか」「見込み税額はどれくらいか」だけでも確認すると、無駄な不安と手戻りを減らせます。

【10ヶ月以内】相続税の納付

相続税は、申告だけでなく納付も10か月以内が原則です。国税庁の資料でも、納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」と示されています。

納付が遅れると延滞税が発生する可能性があり、資金繰りの準備が不十分だと期限直前に苦しくなります。

「納付資金が足りない」場合、延納(分割)や物納(相続財産で納める)という制度もありますが、いずれも原則として申告期限までに手続きが必要で、要件審査もあります。

だからこそ、預貯金の解約・名義変更を後回しにしないことが重要です。相続税がかかりそうだと分かった段階で、①納税資金の候補(預金、売却、借入)②納付方法(現金一括/延納等)③期限までの段取り、を固めておくと、10か月のストレスが一気に減ります。

【1年以内】遺留分侵害請求

遺留分侵害請求は、遺言や生前贈与によって「最低限の取り分(遺留分)」が侵害された場合に、侵害している相手へ金銭で請求する手続きです。ポイントは期限で、家庭裁判所の案内でも、原則として「相続の開始および侵害を知った時から1年」で時効により消滅し、相続開始から10年でも消滅すると説明されています。

注意したいのは、「調停を申し立てただけ」では足りない場合があり、相手に対して権利行使の意思表示(内容証明など)が必要になる点です。

感情的な対立が生まれやすい局面ですが、期限を過ぎると請求自体が難しくなるため、モヤモヤしている段階でも早めに弁護士へ相談するのが現実的です。遺産分割と絡むと複雑化しやすいので、「1年」を強く意識しておきましょう。

【2年以内】高額療養費の申請

高額療養費は、医療費の自己負担が一定額を超えたときに、超過分が払い戻される制度です。相続の場面では、故人が入院や手術で高額な医療費を支払っていた場合に「戻るお金」が発生していることがあります。申請期限は、厚生労働省の資料で「診療を受けた月の翌月の初日から2年」と明示されています。

見落としやすいのは、相続人側が「もう終わったこと」として医療費の領収書を整理せず、請求できるのに放置してしまうケースです。申請先は加入していた医療保険(国保、協会けんぽ、健保組合、後期高齢など)で異なります。まずは故人の保険証情報や加入先を確認し、領収書・明細の保管状況をチェックしましょう。2年は長いようで、相続のバタつきで簡単に過ぎます。「戻る可能性があるお金」として、早めに確認するのが得策です。

【2年以内】葬祭費・埋葬料(費)の申請

葬祭費(国民健康保険など)や埋葬料(会社の健康保険など)は、葬儀・埋葬を行った人に支給される給付です。相続税の話題に埋もれがちですが、数万円単位の支給になることも多く、期限を過ぎると受け取れません。たとえば国民健康保険の葬祭費は、自治体が「葬儀の翌日から2年で時効」と明記しています。

また、協会けんぽの埋葬料(費)も「受けられる翌日から2年で時効」と示されています。

実務のポイントは、「故人がどの保険に入っていたか」で給付が変わることです。国保・後期高齢なら自治体窓口、会社員の健康保険なら協会けんぽや健保組合が窓口になります。さらに、国保加入後すぐ亡くなった場合などは、以前の保険から支給されるため国保からは出ない、といった例外もあります。

申請に必要な領収書(喪主名義等)の要件もあるので、葬儀社の領収書は捨てずに保管し、早めに加入先へ確認しましょう。

【3年以内】相続登記

不動産を相続した場合の名義変更(相続登記)は、令和6年(2024年)4月1日から義務化され、原則として「相続(遺言を含む)で取得を知った日から3年以内」等に申請が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
相続登記は、相続の中でも後回しにされやすい一方で、義務化により放置リスクが明確になりました。

さらに厄介なのは、登記を放置すると、次の相続が起きたとき(数次相続)に権利関係が雪だるま式に複雑化することです。相続人が増えるほど、戸籍収集・署名押印・連絡調整が難しくなり、売却や担保設定など不動産の活用が止まります。相続税がかからないケースでも、登記だけは別問題として期限管理が必要です。不動産がある相続は、税理士だけでなく司法書士とも連携すると最短ルートになります。

【3年以内】死亡保険金の請求

死亡保険金は、相続財産そのものではなく「受取人固有の権利」として扱われるのが一般的ですが、請求手続きには期限意識が必要です。保険法では、保険給付を請求する権利は原則として「行使できる時から3年間」行使しないと時効で消滅するとされています。

つまり、“受け取れるのに請求しないまま”放置すると、法的には不利になり得ます。

もっとも、実務上は保険会社が時効を当然に主張するとは限らず、事情によって対応が異なる場合もあります。ただしそれを期待して先延ばしにするのは危険です。まず、故人の郵便物・通帳引落・保険証券・勤務先の団体保険などから加入状況を洗い出し、保険会社へ連絡して必要書類を取り寄せましょう。保険金は相続の資金繰り(葬儀費用、納税資金、生活費)にも直結するため、“3年あるから後で”ではなく早期着手が正解です。

まとめ

遺産相続の期限は、短いものでは7日以内(死亡届など)から始まり、税務は4か月(準確定申告)、相続税は10か月(申告・納付)、不動産は3年(相続登記)と、タイムラインがはっきり分かれます。特に相続税は国税庁が「死亡を知った日の翌日から10か月」と明示しており、申告遅れは加算税・延滞税などのリスクが高い領域です。

いちばんのコツは、「期限が短い順に、入口手続き(死亡届)→判断が必要な手続き(相続放棄)→税務(準確定→相続税)→名義変更(銀行・登記)」と並べ、逆算スケジュールで動くことです。もし、①不動産がある ②相続人が多い ③借金の可能性がある ④過去の贈与が多い、のいずれかに当てはまるなら、期限ギリギリの独力対応は危険になりやすいので、税理士・司法書士・弁護士への早期相談も現実的な選択肢に入れてください。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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