相続手続きに戸籍謄本が必要なケースとは?取得方法や種類も解説
     

相続コラム

相続手続きに戸籍謄本が必要なケースとは?取得方法や種類も解説

2026/01/26 相続手続

相続が発生すると、銀行の解約・名義変更や不動産の相続登記、相続税申告など、さまざまな手続きで「戸籍謄本(戸籍証明書)」の提出を求められます。普段はあまり触れない書類のため、「どれを、何通、どうやって取ればいいの?」と迷いやすいポイントです。

この記事では、相続手続きで戸籍謄本が必要になる理由、必要な戸籍謄本の種類、必要となる代表的なケース、そして取得方法と注意点まで、手続きの流れがつかめるようにまとめて解説します。2024年3月1日から始まった戸籍の広域交付制度にも触れ、集め方のコツも紹介します。

相続手続きで戸籍謄本が求められる理由

相続手続きで戸籍謄本が必要になる最大の理由は、「誰が相続人であるか」と「被相続人が亡くなった事実」を、公的に証明するためです。相続は、遺産を受け取る側(相続人)にとっては大切な権利ですが、金融機関や法務局など手続きを受け付ける側は、誤った相手に財産を渡したり、のちに別の相続人が現れてトラブルになったりすることを防ぐ必要があります。

戸籍は、出生・婚姻・離婚・死亡・認知など身分関係の履歴が積み上がる「親族関係の台帳」です。被相続人の出生から死亡までの戸籍をつなげると、配偶者や子の有無、婚姻歴、認知した子の存在などが確認でき、法定相続人の範囲を確定できます。結果として、遺産分割協議を進める前提となる「相続人調査」が成立します。逆に、ここが曖昧なまま進めると、名義変更が止まるだけでなく、やり直しのコストも膨らみがちです。

さらに、相続登記(不動産の名義変更)は制度上の重要性が高く、2024年4月1日から相続登記が義務化され、期限内の申請が求められる場面も増えています。だからこそ、戸籍収集を早めに進めることが、相続全体の遅延防止につながります。

相続手続きに必要な戸籍謄本の種類

相続で用意する戸籍謄本は、ざっくり言うと「被相続人側」と「相続人側」の2系統です。ポイントは、“何を証明したいか”で必要な戸籍が変わること。被相続人については「死亡と相続関係の全体像」、相続人については「現在も生存していること(および本人確認の前提)」が求められます。

また、戸籍には「戸籍謄本(全部事項証明書)」だけでなく、過去の戸籍である「除籍謄本」や、様式変更前の「改製原戸籍謄本」が混ざることが一般的です。手数料の目安も異なり、戸籍謄本は450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本は750円とされる自治体例が多いです(自治体により取り扱いは確認してください)。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

相続手続きでまず核になるのが、「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍一式」です。これは1通で終わるとは限らず、転籍(本籍の移動)や婚姻・離婚、戸籍の作り替え(改製)によって、複数の市区町村・複数通に分かれていることがよくあります。ここで重要なのは、死亡の記載がある戸籍だけでは足りないケースが多い点です。出生までさかのぼることで、子の有無(認知を含む)や婚姻歴など、相続人になり得る人を漏れなく確認できます。

この「出生から死亡まで」をそろえる過程では、現在の戸籍謄本だけでなく、除籍謄本(その戸籍から全員が除かれたもの)や改製原戸籍謄本(様式変更前の戸籍の写し)が含まれます。被相続人が高齢であったり、本籍を何度も動かしていたりすると通数が増え、取得先も複数になることがあります。

ただ、2024年3月1日から、一定の条件下で本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍を請求できる「広域交付制度」が始まり、収集の負担は以前より軽くなりました(ただし郵送や代理人が不可など制限があります)。

相続人全員の現在の戸籍謄本

次に必要になりやすいのが「相続人全員の現在の戸籍謄本」です。これは、法定相続人として確定した人が“今も生存している”ことを確認し、手続き相手(銀行・法務局など)が安心して処理できるようにするために求められます。相続人が配偶者や子のみで、被相続人の戸籍の中に相続人の現在情報が十分に載っている場合は、提出先によっては追加提出が省略されることもありますが、「省略できるかどうか」は提出先の運用次第です。基本は「必要になる前提」で準備した方が、後戻りが少なくなります。

また、相続人の状況によっては追加の戸籍が必要になります。たとえば相続人がすでに亡くなっていて代襲相続(子や孫が代わりに相続)になる場合は、亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍、代襲相続人の現在戸籍などが必要になります。兄弟姉妹が相続人になるケースでも、上位順位の相続人がいないことを示すために、直系尊属の死亡が確認できる戸籍が求められ、結果として収集範囲が広がりがちです。

相続手続きで戸籍謄本が必要になるケースとは?

相続手続きでは、「誰が相続人なのか」「被相続人が確かに亡くなっているか」を公的に証明する必要があります。そのため、金融機関や法務局、税務署、家庭裁判所など、さまざまな提出先で戸籍謄本の提出を求められます。

ただし、すべての相続手続きで同じ戸籍が必要になるわけではなく、手続きの内容によって必要な範囲や通数は異なります。ここでは、実務上とくに戸籍謄本の提出が求められることが多い、代表的な5つのケースについて解説します。

相続税申告

相続税の申告が必要な場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本が原則として必要になります。税務署は、申告書に記載された相続人が法定相続人であるか、また相続関係に漏れや誤りがないかを確認するために、戸籍による裏付けを求めています。

相続税申告の期限は、原則として「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。この期限までに戸籍謄本をそろえ、遺産分割の内容を確定させて申告書を提出する必要があります。戸籍収集に時間がかかるケースも多いため、相続税申告が見込まれる場合は、できるだけ早い段階で取得に着手することが重要です。

相続放棄申述

被相続人に多額の借金がある場合などに選択される相続放棄では、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。この際、被相続人の死亡と相続関係を証明するために、戸籍謄本の提出が求められます。

具体的には、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本や、申述人(相続放棄する人)の現在の戸籍謄本などが必要になります。相続放棄の期限は、原則として「相続があったことを知った日から3か月以内」と非常に短いため、放棄を検討している段階でも、戸籍だけは先に取得しておくと、手続きがスムーズに進みます。

限定承認申述

限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内でのみ、被相続人の債務を引き継ぐという相続方法です。相続放棄と同様に、家庭裁判所への申述が必要で、その際に戸籍謄本の提出が求められます。

限定承認では、相続人全員が共同で申述する必要があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本をそろえることが基本になります。相続放棄と同じく、申述期限は「相続があったことを知った日から3か月以内」です。戸籍収集が遅れると期限に間に合わなくなるおそれがあるため、早めの準備が不可欠です。

不動産の相続登記

被相続人が不動産を所有していた場合、その名義を相続人に変更するために相続登記(名義変更)を行う必要があります。この手続きでも、戸籍謄本は欠かせません。

法務局に対して、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を提出することで、相続人の範囲を公的に証明します。さらに、相続人全員の現在の戸籍謄本も併せて求められるのが一般的です。

2024年4月から相続登記が義務化されたことにより、正当な理由なく期限内に登記をしない場合、過料の対象になる可能性があります。登記を円滑に進めるためにも、戸籍の取得は早めに進めることが重要です。

預貯金または有価証券の名義変更や払い戻し

被相続人名義の銀行口座や証券口座を解約したり、相続人名義に変更したりする際にも、戸籍謄本の提出がほぼ確実に求められます。金融機関は、払い戻しを受ける人が本当に相続人であるかを厳格に確認するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本の提出を求めるのが一般的です。

金融機関によっては、原本の提出が必要で、手続きが終わるまで返却されないこともあります。複数の銀行口座や証券口座がある場合、それぞれに戸籍謄本を提出する必要があるため、あらかじめ必要通数を見積もっておくことが、手続きの効率化につながります。

戸籍謄本を取得する際の注意点

戸籍謄本の収集は「取って終わり」ではなく、相続手続き全体の段取りとセットで考えるのがコツです。というのも、相続には期限のある手続きが複数あり、提出先ごとに“受け付けてもらえる戸籍の条件(発行から○か月以内など)”が違うこともあるからです。早く取りすぎて期限切れ扱いになる、逆に遅れて期限に間に合わない、といった失敗を避けるためにも、どの手続きを優先するかを決めてから、必要通数を見積もるのが安全です。

また、戸籍は個人情報の塊でもあります。複数通を持ち歩くほど紛失リスクも上がるため、必要最小限の取得と、提出先で原本還付があるかの確認、そして法定相続情報証明制度の活用可否の検討が、実務的には効いてきます。

相続は期限のある手続き

相続は“いつでもゆっくり進められる”とは限りません。代表的な期限として、相続税申告は原則「死亡を知った日の翌日から10か月以内」です。

さらに、不動産を相続した場合は相続登記が義務化され、一定の期限内(原則3年以内)に申請が必要です。

期限が迫るほど、必要書類の不備が致命的になりやすいので、「まず被相続人の出生から死亡までの戸籍をそろえる→相続人の現在戸籍を整える→並行して金融機関・不動産・税務の必要書類を確認する」という順で進めると、詰まりどころが減ります。特に、相続人が多い・代襲相続がある・本籍移動が多い場合は、戸籍収集だけで時間がかかるため、早めの着手が結果的に最短ルートになります。

戸籍謄本の有効期限

戸籍謄本そのものに法律上の一律の有効期限があるわけではありません。ただし、提出先(銀行・証券会社など)が「発行から3か月以内」「6か月以内」といった条件を設けていることがあります。つまり実務では“提出先のルールが有効期限になる”と考えるのが安全です。

また、相続税申告については、国税庁が申告期限を10か月と示しているとおり、期限管理が重要になります。

早めに戸籍を取ること自体は悪くありませんが、金融機関の期限ルールが厳しそうな場合は、戸籍収集→必要書類の確定→提出直前に不足分を追加取得、という段取りも検討しましょう。迷う場合は、手続きをする窓口(金融機関・法務局・税務署等)に「戸籍はいつ発行のものが必要か」を先に確認しておくと確実です。

戸籍謄本の取得枚数

相続では、手続きをする窓口が複数に分かれやすく、戸籍の「原本提出」を求められる場面も少なくありません。銀行が複数、証券会社もある、不動産もある——となると、戸籍の通数が足りず、追加取得で二度手間になることがあります。一方で、むやみに多く取ると費用も上がり、個人情報の持ち運びリスクも増えます。

実務的な落としどころは、「提出先の数」と「原本還付の有無」を整理してから決めることです。たとえば、原本を提出して返却してくれる金融機関もあれば、手続きの途中で一定期間預かる運用のところもあります。手続きの同時並行を考えるなら、必要先ごとに1通ずつ確保する発想が有効です。

さらに、戸籍一式の束を毎回出す負担を減らしたい場合は、法務局の法定相続情報証明制度を使い、無料で交付される一覧図の写しを提出できるか(提出先が認めるか)を確認すると、取得枚数を抑えられる可能性があります。

相続手続きで戸籍謄本が必要になるのは、被相続人の死亡と相続関係、そして相続人の確定を「公的に証明」するためです。基本となる戸籍は、①被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍一式(除籍・改製原戸籍を含む)と、②相続人全員の現在の戸籍謄本の2つ。相続税申告や不動産の相続登記、金融機関の名義変更など、主要な手続きの多くで求められます。相続税申告には10か月の期限があり、相続登記も義務化されているため、戸籍収集は早めに着手するほど後がラクになります。

また、2024年3月1日から広域交付制度が始まり、条件を満たせば本籍地以外の窓口で戸籍を請求できるようになりましたが、請求できる人の範囲や、郵送・代理人不可などの制限もあります。

まずは「誰の戸籍が、どこまで、何通必要か」を整理し、提出先の有効期限ルールや原本還付の運用も確認したうえで、ムダなく・漏れなくそろえていきましょう。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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