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年間110万円以下で贈与税を非課税に!申請方法と注意点
2023/01/20 相続手続
生前贈与とは、存命中に財産を他者に贈与することを言います。この仕組みが、相続税を節税する手段として広く活用されています。というのも、この贈与税には、一定の金額が非課税になる特例が複数あるのです。そこで今回は、贈与税の概要、非課税枠、そして暦年贈与についてご紹介していきます。
贈与税とは
「贈与税」とは、個人から個人へ一定額以上の財産を無償で譲り渡した際に生じる税金のことを言います。この贈与税は、贈与した側ではなく、贈与を受けた側が支払います。
贈与税の7つの非課税枠
ここでは、次の7パターンの贈与税の非課税枠をそれぞれご紹介します。
- 生活費の贈与は贈与税の対象外
- 暦年贈与の基礎控除額
- 相続時精算課税の特別控除額
- 夫婦間の自宅等の贈与(配偶者控除)
- 住宅取得等資金の贈与の非課税枠
- 教育資金の一括贈与の非課税枠
- 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税枠
生活費の贈与は贈与税の対象外
贈与税を調べる上で、まず始めにおさえておくべきことは、生活費としての贈与は、贈与税の対象外だということ。扶養家族である夫婦や親子、兄弟姉妹に贈与された生活費や教育費は、家族を扶養するためのものです。そのため「贈与税としての課税」には当てはまりません。ですが、贈与した生活費や教育費が、預貯金や不動産の購入などに使用された場合は課税対象になるので注意が必要です。
暦年贈与の基礎控除額
暦年(1月1日~12月31日)ごとの贈与が1人あたり年間110万円以下であれば、贈与税は非課税となります。
例えば、110万円を1年ごとに贈与した場合、贈与税の課税は発生しません。そのため申告も不要です。しかし、合計額を一括で贈与したとみなされる場合、贈与税がかかるので注意が必要です。
贈与税の配偶者控除(夫婦間の自宅等の贈与)
夫婦間の贈与は夫から妻、妻から夫のどちらからでも可能です。ただし、婚姻期間が20年以上の夫婦のみに適用されます。この配偶者控除は、自宅を贈与する場合や、自宅の購入資金を贈与する場合に、2,000万円までが非課税となります。また、基礎控除の110万円とも併用が可能なため、合わせると2,110万円まで非課税で贈与も可能です。ただ、この特例を使用し、税額が0になった場合でも、贈与税の申告が必須となります。申告書の提出漏れに注意しましょう。
住宅取得等資金の贈与の非課税の特例
平成27年1月1日から令和5年12月31日までに、父母や祖父母などの直系尊属からの住宅購入・増改築のための資金贈与は、一定額まで贈与税が非課税となります。非課税になる限度額は、住宅購入の契約日や贈与の時期、住宅の種類によって、以下の通りに決められています。
住宅取得資金等の非課税限度額
(令和3年12月31日以前の贈与で消費税等の税率が10%でない場合)
契約締結日 平成28年1月1日~令和2年3月31日
- 省エネ等住宅:1,200万円
- その他の住宅:700万円
契約締結日 令和2年4月1日~令和3年12月31日
- 省エネ等住宅:1,000万円
- その他の住宅:500万円
住宅取得資金等の非課税限度額
(令和3年12月31日以前の贈与で消費税等の税率が10%の場合)
契約締結日 平成31年4月1日~令和2年3月31日
- 省エネ等住宅:3,000万円
- その他の住宅:2,500万円
契約締結日 令和2年4月1日~令和3年12月31日
- 省エネ等住宅:1,500万円
- その他の住宅:1,000万円
住宅取得資金等の非課税限度額
(令和4年1月1日以後の贈与の場合)
- 省エネ等住宅:1,000万円
- その他の住宅:500万円
教育資金の一括贈与の非課税制度
令和5年3月31日までに、父母や祖父母から教育資金を一括で贈与を受ける場合、最大1,500万円が非課税となります。学校教育に支払う費用以外に、学習塾や習い事の費用も500万円まで非課税として適用されます。尚、この制度では、将来にわたって必要な教育費を一括贈与した際に、非課税になるのが特徴です。そのため、必要な教育費をその都度払うのは、不要の範囲であるため元々贈与税は発生しません。
また、この制度を利用するには、金融機関に専用の「教育資金口座」の開設が必要です。贈与された資金はこの口座に預け入れ、教育資金が必要になった際に引き出して支払います。尚、引き出した際は、金融機関に領収書の提出が必要です。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度
令和5年3月31日までに、父母や祖父母から子どもや孫へ、結婚・子育てのための資金を一括贈与する場合、1,000万円までが非課税となります。尚、このうち結婚資金は上限300万円が非課税として適用されます。また、教育資金の一括贈与の非課税制度と同様、この制度を利用するにも専用口座の開設が必要です。引き出した際は、金融機関に領収書の提出が必要です。
「暦年贈与」を受ける方法
ここでは「暦年贈与」を受けるための3つの工程をご紹介します。
- 契約書を作成する
- 資金の受け渡しを行う
- 110万円以上の場合は贈与税の申告を行う
契約書を作成する
この契約書には、「いつ」「だれからだれに」「いくら」贈与したかを明確に残しておくためのものです。契約書には以下の点に注意しましょう。
それぞれが自署及び実印での押印を行う
贈与をする側とされる側、それぞれの署名と実印での押印をするようにしましょう。
公証人役場での確定日付の取得
お近くの公証人役場で、贈与契約書に「確定日付」のスタンプを押してもらいましょう。この押印により、契約書を後付け(バックデート)で作成したものではないことが証明できます。尚、贈与契約書の贈与日から数日程度の場合は、後日でも問題ありません。
資金の受け渡しを行う
記録が残るように、贈与する側からあげる側へ、振り込みで行うのが望ましいです。わかりやすいように、資金の送金日と贈与契約書の日付を合わせておけると良いでしょう。
110万円以上の場合は贈与税の申告を行う
年間で、110万円を超える資金の贈与をする場合は、贈与税の申告及び納税の手続きを行います。必要事項を記載した贈与税申告書を税務署に提出し、別途、贈与税を納付します。
暦年贈与の基礎控除額の注意点
暦年贈与を受ける上で、いくつか注意点があります。以下の内容はしっかり確認した上で、手続きを進めましょう。
通帳を預かっておくのはNG
贈与者自身が、子ども名義で通帳を作り、自ら管理した上で、「贈与したことにする」という例が、失敗例としても多く見られます。この状況は、「贈与」としてみなされません。後に、その資金が相続財産として課税対象になるので注意しましょう。
毎年、同時期・同金額の贈与に注意
毎年100万円ずつ7年に分けて贈与した場合、初年度に「700万円を7年分割でもらえる権利」を贈与したとみなされ、700万円相当に課税される危険性があります。このようなリスクをなくすため、同時期・同金額の贈与は避けたほうが良いでしょう。
今回は、暦年贈与を中心に、生前贈与に活用できる贈与税の非課税枠について解説しました。それぞれの特約を上手に活用すれば、節税効果も期待できるはずです。ぜひこのコラムを活用しながら、生前贈与の計画を進めてみてくださいね。
この記事の監修者
税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。