3年以内の相続登記が義務化?民法改正の内容と名義変更の手続きの進め方
     

相続コラム

3年以内の相続登記が義務化?民法改正の内容と名義変更の手続きの進め方

2024/01/14 相続手続

土地を相続した際、土地の所有権を変更する「相続登記」の手続きを行います。民法改正が行われ、相続登記は2024年4月1日から義務化されました。これから相続をする人や相続した土地の名義変更がまだという人の中には、手続きの進め方に不安を感じている人もいるのではないでしょうか。そこでコラムでは、義務化された相続登記の内容や、手続きの流れなどの相続登記の基礎知識について解説します。

2024年4月から相続登記が義務化

民法改正が行われるまで、相続した土地であっても相続登記の申請はせず、そのまま放置しても罰則が科されることはありませんでした。しかし、土地の所有者が登記簿で特定できない土地が増えてしまったことが問題となっていました。このような背景から、2024年4月1日より、法律で相続登記の義務化が定められたというわけです。

【2024年4月施行】相続登記の義務化の内容

相続登記の義務化には、大きく分けて3つのポイントがあります。具体的に以下で確認していきましょう。

①申請期間は3年以内

相続登記には申請期限があります。相続する財産の中に、土地や建物などの不動産があると知った日から3年以内の登記が必要です。また、不動産の相続が2024年以前であっても、相続登記の義務の対象となります。

②罰則は過料の支払い

申請期限である3年を超過して相続した土地を放置した場合、「100,000円以下の過料」の罰則を受けることになります。ただし、「期日を超える正当な理由」となる以下のようなケースは、罰則の対象ではありません。

③住所変更等の登記も義務化

土地の所有者の変更手続きだけでなく、所有者の住所・氏名が変更となった場合にも登記が必要です。相続登記の義務化は2024年4月から開始となりますが、住所・氏名の変更による登記の義務化は2026年4月の施行が予定されています。なお、住所・氏名の変更による登記の申請期限は、変更から2年以内と定められています。期限内に登記を行わなかった場合、「50,000円以下の過料」が罰則として科されます。

相続した土地の名義変更の3つのパターン

相続登記は相続の状況によって手続きの進め方や用意する書類も異なります。ここでは主に主要な3つのケースを確認しておきましょう。

①遺言書がある場合

遺言書を家庭裁判所で検認してもらう

②遺言書がない

法定相続分で分割する

③遺言書がない

遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する

3つのパターンを含めた相続登記の全体の流れは後述します。

相続登記の手続きの7ステップ

相続した土地の名義変更の手続きを、7つの流れに沿って解説します。

①相続する土地の特定と遺産分割協議書の作成

まず、不動産の登記簿を確認します。被相続人の遺産である土地が、被相続人の名義であることを特定する必要があります。実際、今まで相続登記が義務化されていなかったことから、土地の名義が被相続人の親になっていたなどのケースもよくあることです。遺産分割協議書の作成にも必要になることから、登記簿の確認は優先して行いましょう。

相続する土地を認知している場合
土地の名義人が記載されている「登記事項証明書(登記簿謄本)」を、法務局で発行してもらいましょう。土地の「地番」がわかる場合に発行が可能なものですが、登記上の番号である地番は、住所と異なるケースがあるので注意しましょう。また、登記事項証明書は、オンラインと法務局証明サービスセンターの窓口の2種類で発行が可能です。

相続する土地が不明な場合
被相続人が所有していた土地が不明確な場合、市町村役場で名寄帳を取り寄せましょう。課税対象の土地や家屋が、所有者ごとにまとめられているため、相続対象となる被相続人の土地を一覧で確認することができます。

②相続する土地の固定資産税評価額を確認

相続する土地の固定資産税評価額は、「登録免許税」の基準になります。この登録免許税は、相続する土地の固定資産税評価額の0.4%で算出されます。この計算に必要になることから、固定資産税評価額を確認できる書類を手配しましょう。例えば、毎年4~5月ごろ、土地の所有者に宛てて市町村から送付される「固定資産税納税通知書」で、固定資産税評価額の確認ができます。この書類が見つからないという場合は、土地がある市町村役場で「固定資産税評価証明書」の取得が可能です。また、名寄帳を取得している場合は、この書類にも固定資産税評価額が記載されています。

③遺言書の確認

先述の通り、遺言書の有無は、用意する書類や手続きの進め方に関わります。遺言書のある場合とない場合、両方の進め方を確認しておきましょう。

遺言書がある場合
遺言書は、家庭裁判所での「検認」が必要です。検認した証明となる「検認調書」あるいは「検認済証明書」は家庭裁判所でもらえます。また、公正証書遺言や自筆証書遺言が保管されている場合、検認は不要です。

遺言書がない場合
遺言書がない場合、「相続した土地の名義変更の3つのパターン」の章でも解説したように、法定相続分で遺産分割を行うか、遺産分割協議で決める方法があります。

④相続する土地の名義変更のための書類を用意する

必要書類は、遺言書の有無や遺産の相続方法によって異なります。それぞれのケースを見ていきましょう。

遺言書がある場合の必要書類

法定相続分で分割する / 相続人がひとりの場合

遺産分割協議で遺産分割をする場合

⑤登記申請書の作成

実際に「登記申請書」を作成していきます。法務局の公式サイトにある登記申請書の雛形から、該当する書類をダウンロードしましょう。

⑥登記手続き案内の予約

書類の準備が済んだら、法務局の登記手続案内を利用できると良いでしょう。書類の不備や記入方法の不明点を確認してもらえます。

⑦法務局へ税金の支払いと書類の提出

窓口、郵送、オンラインの3つの提出方法があります。それぞれ以下のように提出します。

窓口に提出:法務局の窓口に書類を直接提出

郵送で提出:法務局に書類を郵送

オンラインで提出:データ形式でオンライン上に提出

2024年4月から義務化される土地の相続登記は、今まで相続した土地も対象です。これから相続する予定の人だけでなく、名義変更しないままだった土地の相続人にも関わる民法改正です。申請期間を過ぎると過料の支払いもあるため、念入りな確認が必要だと言えます。このコラムとともに、相続登記の申請に向けて話し合いの機会を作ってみてくださいね。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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