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葬儀費用は相続財産から控除できる?対象となる費用と注意点
2023/10/30 相続手続
目次
家族や親戚など、身近な血縁関係の人が亡くなると、葬儀を執り行い、故人の死を弔います。近年では、小規模な葬儀が徐々に見られるようになりましたが、それでも葬儀費用には、決して安くはない費用がかかります。そこでこのコラムでは、税金の控除対象になる特定の葬儀費用(葬式費用)について、注意点を併せてご紹介します。
葬儀費用は所得控除できない
まず葬儀費用は、確定申告の所得控除の対象外です。また、故人の確定申告「準確定申告」でも同様に、葬儀費用は所得控除の対象ではありません。確定申告では、所得控除の対象となる項目も複数あるので、葬儀費用と混同しないように気を付けましょう。
葬儀費用は相続財産から控除できる
確定申告の所得控除対象外である葬儀費用は、相続財産から控除が可能です。相続税の課税対象額が下がることで、結果的に、相続人が納める相続税の減税にも繋がります。とはいえ、葬儀にかかったすべての費用が控除の対象になるわけではありません。相続財産の控除の対象となる費用と対象外になる費用は、明確に定められています。それぞれ確認しておきましょう。
相続財産から控除の対象となる葬儀費用
- 通夜、告別式のために葬儀会社に支払った費用
- 通夜、告別式でかかった飲食費用
- 葬儀を手伝ってもらった人などへの心付け
- 寺、神社、教会などへ支払ったお布施、戒名料、読経料など
- 通夜や告別式当日に参列者にわたす会葬御礼の費用
- 火葬、埋葬、納骨にかかった費用
- 遺体の捜索、遺体や遺骨の運搬にかかった費用
- 死亡診断書の発行費用
相続財産から控除の対象外となる葬儀費用
- 香典返しにかかった費用
- 墓石や墓地の購入、借りるためにかかった費用
- 初七日や四十九日などの法事でかかった費用
- 遺体の解剖や、裁判での特別な処置にかかった費用
葬儀費用を控除するときの注意点
葬儀費用を相続財産から控除することを検討している際、気を付けておきたいポイントがいくつかあります。控除の利用ができるかどうかにも関わる内容もあるので、なるべく早い段階で確認しておけるとよいでしょう。
仮払い制度で銀行から150万円まで引き出せる
故人の預貯金は、分割協議が済み、遺産分割が完了して初めて引き出すことができます。しかしながら、葬儀費用や医療費など急ぎで支払う必要があるものも少なくありません。家族など相続人に大きな負担がかかってしまうこのような場合に利用できるのが、預金仮払い制度です。金融機関での手続き後、故人の口座から上限150万円まで引き出すことができます。故人に関する支払いに困っている際は、相続人とこの制度の利用について話し合ってみましょう。
領収書は保管しておく
葬儀費用を相続財産から控除する場合、領収書などの支払いの明細は、きちんと保管しておきましょう。相続人が各々何らかの支払いを行っている場合、誰が立て替えたのか曖昧になっているとトラブルに繋がるリスクもあります。支払いを証明できる領収書で支払いの状況を照らし合わせることで、相続税の控除の手続きもスムーズに行えるでしょう。また、お寺へのお布施など、場合によっては領収書の発行が済んでいないことも考えられます。その際は、支払いの明細を手書きのメモで残すようにしましょう。メモには以下の内容を記載します。
- 支払先の名称
- 支払先の所在地
- 支払った年月日
- 支払った金額
- 支払の内容(お布施や心付けなど)
不正申告にはペナルティが課せられる
偽った金額で葬儀費用を相続財産から控除すると、税務調査により不正が見つかります。虚偽の申告は追徴課税の対象です。結果的に税金を多く支払わなければならないので、軽い気持ちで偽るのはやめましょう。
葬儀費用の控除を適用できない人がいる
葬儀費用の控除は、すべての人に適用できるというわけではありません。以下に当てはまる人は利用できないので注意が必要です。
- 制限納税義務者:国内の財産を引き継いだ時点で、日本国内に10年以内に住所を有していない人等
- 特定受遺者:遺言で特定の財産を与えられた、相続人・包括受遺者以外の人
葬儀費用を相続財産から控除する際の手続き
申告書第13表「債務及び葬式費用の明細書」には、以下の項目を記載します。
- 支払先の名称・所在地(氏名・住所)
- 支払年月日
- 葬式費用の金額
- 費用を負担する人の氏名
- 負担する金額
また、「3 債務及び葬式費用の合計額」の欄には、葬式費用の合計と、負担した人ごとに、金額を記載していきます。そして相続税申告書に、相続財産から控除する葬儀費用の領収書を添付します。この時に領収書が用意できない場合は、手書きのメモを添付します。
葬儀費用を相続財産から控除すると、相続税の減額にも繋がります。活用することで相続人の負担を減らせますが、葬儀で支払った費用でも対象にならないものも存在するので気を付けましょう。ぜひこのコラム参考に、相続税の控除を正しく使用してみてください。
この記事の監修者
税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。