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遺言書は遺書と何が違う?種類や書くタイミング、注意点を解説
2024/04/29 相続コラム
人生の終わりに向けて、多くの人は自分の財産をどのように分配するかについて考えます。その際、「遺言書」と「遺書」という言葉を耳にすることがあるでしょう。しかし、この2つの似ている言葉には異なる意味があるのです。
本記事では、遺言書と遺書の違いについて詳しく説明し、遺言書を書くタイミングや注意点についても解説します。
遺書とは
遺書は法的効力を持たない文書で、亡くなる前に家族や友人に向けてメッセージを残すためのものです。遺書には、主に以下のような内容を記します。
- 家族や友人へのメッセージ
- 子供や孫への願い事
- 葬儀に関する希望
遺書は、法的拘束力がないため、財産分配について書かれていても、それに従う義務はありません。しかし、遺された人々にとって、故人の思いを知ることができる大切な手紙となります。
遺言書とは
遺言書とは、法的効力を持つ文書で、作成者が亡くなった後の財産分配について指示を与えるものです。遺言書には、具体的に以下のような内容を記載します。
- 財産の分配方法
- 遺言執行者の指定
- 未成年の子供がいる場合の後見人の指定
- 葬儀やお墓に関する希望
遺言書を作成するには、法律で定められた方式に従う必要があります。日本では、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の遺言書が認められています。
これらの方式を基に遺言書を作成していない場合、遺言書に効力を持たないので注意しましょう。なお、3つの遺言書についての詳細は後述します。
遺言書の種類
日本の民法では、遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あります。ここでは、これら3つの遺言書について解説します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印する形式です。英語や略字の使用も認められていますが、録画や録音、パソコンで作成された書類などは認められません。財産目録については自書によらないことも可能です。
自筆証書遺言は、必ず直筆で作成する必要があるのです。
これは最も一般的な遺言の方式で、費用がかからないというメリットがありますが、遺言者の死後に発見されないリスクや、内容の確実性に欠ける可能性も含んでいます。
また記載が必要な日付は、暦上の日付だけでなく、「●歳の誕生日」や「●●●を祝った日」など、年月日が正確に確認できる表記であれば問題ありません。ただし、月日のみで日付がない場合は無効になるので注意しましょう。
なお、自筆証書遺言の開封は、紛失や偽造を防止するという観点から、家庭裁判所で相続人の立ち会いのもと、行われます。
公正証書遺言
公正証書遺言は、2人の公証人が立ち会うなか、遺言者が口述し、公証人が筆記・読み上げを行い、遺言者が署名・押印する方式です。
公証人が関与することで、遺言の内容の確実性が高まりますが、公証人手数料等のコストがかかり、遺言内容が公になるデメリットもあります。
もし遺言者が病気や怪我によって、公証役場に行くことが困難な場合は、自宅や病院まで公証人に来てもらい、遺言の筆記を行ってもらうことができます。
また、聴覚や言語機能に障害がある場合は、口述や手話で公証人に内容を伝え、公証人が代筆することで遺言書を作成します。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が遺言の内容を自書・封印し、その封書に遺言者と証人2人以上が署名・押印する方式です。
この方式では、遺言内容を秘密にしたまま作成できるメリットがありますが、作成後に公証人役場に封書を提出する必要があります。
遺言書を書くタイミング
遺言書には、有効期限が定められていません。そのため、遺言書が書かれたのが何十年も昔であっても、法的効力を持ちます。このように遺言書を書くタイミングは人それぞれですが、以下のような場合に検討すると良いでしょう。
- 一定の年齢に達した時
- 重大な病気を患った時
- 危険な仕事に就く時
- 家族構成に変化があった時(結婚、出産、離婚など)
遺言書は、いつ書いても有効ですが、心身ともに健康で判断力がある時に作成することが大切です。
また、人生の節目で見直しを行い、必要に応じて内容を更新することも重要です。
遺言書を書く際の注意点
遺言書を書く際は、主に以下の点に注意が必要です。
- 法律に従った方式で作成する
- 内容を明確かつ詳細に記述する
- 遺言執行者を信頼できる人に指定する
- 遺言書の保管場所を家族に伝える
- 公平な分配を心がける
遺言書は、財産分配について争いが起きないように、明確に記述することが大切です。また、遺言執行者は、遺言の内容を実行する重要な役割を担うため、信頼できる人を選ぶ必要があります。
遺言書は、保管場所にも気を付けることが大切です。保管場所に関して、事前に家族に伝えておけるとよいでしょう。
なお自筆証書遺言の場合、家族が見つけられない可能性があるため、公証役場や法務局に保管することも検討しましょう。
遺言書と遺書は、どちらも人生の終わりに向けて書かれるものですが、法的効力の有無が大きな違いです。遺言書は財産分配について法的拘束力を持ち、遺書は故人の思いを伝えるためのものです。
遺言書を書く際は、法律に従った方式で作成し、内容を明確に記述することが大切です。また、遺言執行者を信頼できる人に指定し、保管場所を家族に伝えておくことも重要です。
人生の終わりに備えて、遺言書や遺書を書くことは、残された家族への配慮であり、自分の意思を伝える大切な手段です。
健康な時に、遺言書や遺書について考えておくことをおすすめします。
この記事の監修者
税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。