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前妻との間に子どもがいる配偶者が亡くなった場合、相続はどうなる?
2024/10/28 相続コラム

前妻との間に子どもがいる配偶者が亡くなった場合、相続はどうなるのでしょうか?実は、後妻とその子どもだけでなく、前妻の子にも相続権があることをご存知でしょうか。そこでこのコラムでは、前妻の子の相続権や、前妻の子との間で起きやすい相続トラブル、そして前妻の子に財産を相続したくないケースなど、前妻の子の相続に関する知識を網羅的にご紹介します。
前妻の子にも相続の権利はある!
相続において、前妻の子は現在の配偶者の子と同等の相続権を持ちます。離婚や再婚の有無に関わらず、法定相続人である子には平等な相続分が認められているためです。
例えば、前妻との間に2人の子がおり、現在の配偶者との間に1人の子がいる場合、相続分は以下のようになります。
- 配偶者:2分の1
- 子3人で2分の1を均等に分ける(各6分の1)
このとき、前妻の子2人と現在の配偶者の子1人は、それぞれ6分の1ずつの相続分を取得します。また、遺留分についても同様に平等な権利が認められています。
ただし、以下のケースでは相続権を失います。
- 養子縁組が解消された場合
- 相続人欠格事由に該当する場合
- 相続放棄をした場合
なお、前妻の子の相続権について、遺言で制限することはできません。遺留分の範囲内での権利は法律で保護されているためです。
このように、前妻の子の相続権は法律で強く保護されています。遺産分割の際は、すべての法定相続人の権利を適切に考慮する必要があるということがわかります。
前妻の子との間で起きやすい相続トラブル
このように前妻の子は、現在の配偶者の子と同等の相続権を持つことがわかりました。しかし、家族関係の複雑さから、以下のようなトラブルが発生しやすい傾向にあります。
- 前妻の子と連絡が取れない
- 前妻の子が相続手続きに協力してくれない
- 後妻と後妻の子が財産をすべて相続しようとする
- 前妻の子が遺留分侵害額請求をしてくる
これらの問題点についてそれぞれ詳しく解説していきます。
前妻の子と連絡が取れない
離婚後、親子の交流が途絶えると、前妻の子の所在確認が困難になることがあります。しかし、相続手続きには相続人全員の同意が必要になります。そのため、以下の方法によって前妻の子の所在を確かめ、連絡を取らなければなりません。
- 戸籍の附票を取得して現住所を確認する
前妻の子が相続手続きに協力してくれない
前妻の子が、相続手続きへの協力を拒否するケースも実は少なくありません。この場合、以下の方法で対応しましょう。
- 話し合いによる解決を試みる
- 前妻の子の協力を仰がなくても相続手続きを進められるように遺言書を作成しておく
- 専門家に依頼する
後妻と後妻の子がすべての財産を相続しようとする
後妻側が前妻の子を排除して相続財産を独占しようとするケースがあります。しかし、これは法定相続分を侵害する違法な行為です。先述したように、前妻の子も後妻の子と同様に相続権があります。相続した財産を隠すなどの行為は、トラブルに発展してしまうことも考えられるので止めましょう。スムーズに話し合いを進めるためには、以下のことに気を付けるとよいでしょう。
- 相続財産の適切な把握と管理
- 相続人全員での話し合いの場を設ける
- 必要に応じて弁護士による仲介を依頼
前妻の子から遺留分侵害額請求をされる
遺言や生前贈与により前妻の子の遺留分が侵害された場合、遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。このようなトラブルを防ぐためには、生前から以下の対策を講じることが重要です。
- 前妻の子との関係を良好に保つ
- 相続財産の内容を明確にしておく
- 公平な遺産分割のための遺言書を作成する
- 必要に応じて生前贈与を活用する
相続トラブルが発生した場合は、早期に弁護士に相談し、適切な対応を取ることをお勧めします。
前妻の子に財産を相続したくない場合
前妻の子は法定相続人として相続権を持ちますが、以下の方法で財産の相続先をある程度コントロールすることが可能です。ただし、遺留分を侵害する場合は、後日の請求リスクが残ることに注意が必要です。
遺言書を作成しておく
遺言書により、法定相続分に関係なく財産の相続先を指定できます。
遺言書作成のポイント
- 公正証書遺言の活用
- 配偶者居住権の設定
- 特定の財産を指定相続人に相続させる
- 遺言執行者の指定
ただし、遺留分の制限があるため、前妻の子の遺留分(法定相続分の2分の1)を侵害する場合は、遺留分侵害額請求を受ける可能性があるので注意が必要です。
生前贈与をしておく
生前贈与を活用することで、相続財産を減らすことができます。
生前贈与の活用方法
- 暦年贈与(年間110万円まで非課税)
- 教育資金贈与(1,500万円まで非課税)
- 結婚・子育て資金贈与(1,000万円まで非課税)
ただし、相続開始前7年以内(3年以内)の贈与は相続財産に加算され、遺留分の計算対象となるので気をつけましょう。
財産は自分名義にしない
前妻の子に相続の権利が発生するのは、実親の財産に対してです。そのため、後妻の名義になっている財産は対象ではありません。具体的に以下のような方法を取ることで、相続を調整することが可能です。
- 不動産は配偶者名義で購入
- 預貯金は配偶者名義で管理
- 有価証券は配偶者名義で保有
ただし、婚姻中の財産は実質的な共有財産となる可能性があるため、完全な対策とはならない場合があるので注意しましょう。
生命保険を活用する
生命保険金は相続財産には含まれず、遺産分割協議も対象外となります。そのため、遺留分の計算対象にもなりません。保険金受取人に直接支払われる生命保険を掛けておくことも一つの方法だといえるでしょう。
生命保険活用のポイント
- 受取人を後妻や現在の子に指定
- 死亡保険金を相続対策の財源として活用
- 契約者と被保険者を別にして贈与性を持たせる
以上の対策を組み合わせることで、より希望に適った財産相続が可能になります。ただし、これらの対策には法的な制限やリスクが伴うため、専門家に相談の上、慎重に検討することをお勧めします。
往々にして、相続とは問題が生じやすい手続きです。そのため、前妻の子の相続権に関する話し合いや手続きとなると、簡単にはいかないことも多々あるでしょう。離婚歴のある配偶者がいる方は、ぜひこのコラムを参考に、少しでもリスクを減らし、相続手続きを進められるように準備してみてくださいね。
この記事の監修者

税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。