未成年者の相続人がいるときの対応は?特別代理人が必要ないケースや注意点も解説
     

相続コラム

未成年者の相続人がいるときの対応は?特別代理人が必要ないケースや注意点も解説

2024/11/26 相続コラム

相続問題において、未成年者の権利をどのように守るかは重要な課題です。未成年者は判断能力が十分でないとされ、単独で法律行為を行うことができません。そのため、相続手続きにおいては特別な配慮と対応が必要となります。この記事では、未成年者が関わる相続の基本的な仕組みから、実務上の注意点まで、段階を追って解説します。

未成年者は遺産分割協議に参加ができない

未成年者は法律上、単独で法律行為を行うことができません。これは、未成年者の判断能力が十分に備わっていないと考えられているためです。例えば、未成年者が携帯電話を契約する際に親の同意書が必要なのも、同じ理由に基づいています。 遺産分割協議も法律行為の一つであるため、未成年者には参加資格がありません。そのため、仮に未成年者を含めて遺産分割協議を行い、合意が成立したとしても、その協議は法的に無効となってしまいます。全ての相続人による有効な合意とは認められないためです。

未成年者が遺産を相続するには?

未成年者に代わって遺産分割協議に参加するのが法定代理人です。未成年者の場合、親権者である父と母が共同で法定代理人となります。ここで重要なのは「共同」という点です。民法では、婚姻中の父母は共同して親権を行使すると定められているため、父母どちらか一方だけでは遺産分割協議を進めることはできません。

法定代理人との利益相反が問題となる場合

ただし、未成年者と法定代理人の利益が対立する場合、法定代理人は代理権を行使できません。たとえば、父親が亡くなり、母親と未成年の子どもが相続人となったケースを考えてみましょう。この場合、法定代理人である母親の相続分を増やせば、自動的に子どもの相続分は減ることになります。 このような利益相反は、実際の遺産分割の結果に関係なく、客観的な状況で判断されます。たとえ法定相続分通りに分割されたとしても、母親と子どもの利害が対立する可能性がある時点で、利益相反の状態にあると判断されます。

特別代理人による遺産分割

このような利益相反のケースでは、家庭裁判所が選任する特別代理人が必要となります。特別代理人とは、法定代理人が代理権を適切に行使できない場合に、未成年者の利益を守るために選ばれる代理人です。特に、親権者と未成年者の利益が相反する場合には、必ず特別代理人の選任が必要となります。 このように、未成年者の相続では、法定代理人や特別代理人という制度を通じて、未成年者の権利が適切に守られる仕組みが整えられています。

特別代理人が必要ない3つのケース

特別代理人の選任は、必ずしもすべての未成年者の相続で必要というわけではありません。いくつかの状況では、特別代理人を選任せずに相続手続きを進めることが可能です。

①法定相続分により遺産を承継する

最も単純な方法は、法定相続分通りに遺産を承継する方法です。この場合、遺産分割協議自体が不要となるため、特別代理人の選任も必要ありません。ただし、この選択には注意点があります。相続財産が共有状態のまま維持されるため、不動産や株式などの財産が含まれている場合、将来的に権利関係が複雑化するリスクがあります。早期に売却するような場合を除いては、あまり推奨できない方法と言えるでしょう。

②親権者の相続放棄や離婚

法定代理人である親権者が相続人とならない場合も、特別代理人は不要です。例えば、親権者が相続放棄をした場合や、被相続人との離婚により相続権を失っている場合には、親権者は子どもの法定代理人として遺産分割協議に参加することができます。ただし、未成年の子どもが複数いる場合、親権者が複数の子どもの間で一方を優遇するような事態も考えられるため、このような場合には依然として特別代理人が必要となります。

③未成年者が成人になるまで待つ

もう一つの選択肢として、未成年者が成人に達するまで遺産分割を待つという方法があります。成人すれば本人が直接遺産分割協議に参加できるため、特別代理人は不要となります。しかし、この方法には大きな実務的な課題があります。未成年者の年齢によっては10年以上も手続きが停滞することになり、その間、相続財産の処分や管理に支障が生じる可能性が高くなります。そのため、この方法は必ずしも現実的とは言えません。 このように、特別代理人を選任せずに相続を進める方法はいくつか存在しますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。

相続人に未成年者がいる場合の3つの注意点

相続人に未成年者が含まれる場合、手続きの面で特別な配慮が必要となります。特に以下の点について、慎重な対応が求められます。

①遺産分割協議書案が重要

特別代理人の選任申請の際には、遺産分割の予定内容を示す協議書案の提出が必須となります。この案の作成では、未成年者の権利を守ることが最優先事項です。原則として、未成年者の法定相続分は最低限確保する必要があります。法定相続分を下回る内容の場合、家庭裁判所が特別代理人の選任を認めない可能性があるためです。 ただし、遺産の性質や状況によって、法定相続分の確保が難しい場合もあります。そのような際は、その理由を特別代理人選任申立書に明確に記載し、家庭裁判所の理解を得る必要があります。

②遺産分割協議書の作成方法

協議書の作成では、未成年者の代理として法定代理人または特別代理人が署名・押印します。法定代理人の場合は、共同親権の観点から父母両名の署名が必要です。また、手続きの正当性を担保するため、代理人の実印と印鑑証明書の提出も求められます。法定代理人の場合は父母双方の書類が必要となります。

③相続税の未成年者控除

未成年者が相続人となる場合、税制面での優遇措置があります。未成年者控除と呼ばれるこの制度では、未成年者が18歳になるまでの年数に10万円を掛けた金額を、相続税から控除することができます。例えば15歳の相続人の場合、3年分で30万円の控除が可能です。相続税が発生するケースでは、この制度を活用することで税負担を軽減できます。 未成年者が関わる相続では、法定代理人や特別代理人の制度を通じて、未成年者の権利を保護する仕組みが整えられています。ただし、状況に応じて適切な方法を選択する必要があり、時には専門家の助言を得ることも重要です。未成年者の将来に関わる重要な手続きだからこそ、慎重な判断と対応が求められます。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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