独身の人が亡くなったら誰が相続人?相続時の注意点や相続人がいないケースも解説
     

相続コラム

独身の人が亡くなったら誰が相続人?相続時の注意点や相続人がいないケースも解説

2024/11/26 相続手続

相続は誰もが直面する可能性のある重要な法律問題です。特に、日本では高齢化や未婚化の進行に伴い、独身者の相続問題が増加の一途。相続手続きを円滑に進めるためには、誰が相続人となるのか、どのような順序で相続権が発生するのか、また特殊なケースではどのような対応が必要かの理解が不可欠です。この記事では、法定相続人の基本的な仕組みから、独身者特有の相続問題まで、実務的な観点から解説していきます。

法定相続人とは

法定相続人とは、相続が発生した場合の故人の財産を受け継ぐ権利を持つ人を指します。これは単なる慣習ではなく、民法によって明確に規定された権利です。相続人間で遺産の分配方法を話し合う際には、法律で定められた相続分が重要な基準となります。

相続順位

相続の権利は、親族関係の近さで順位がつけられていきます。最も重要な特徴は、配偶者が必ず相続人になるという点です。ただし、この権利は戸籍上の配偶者にのみ認められ、事実婚や離婚後の元配偶者は対象外になります。 第一順位は子や孫などの子孫。配偶者と共に相続権を得る立場です。もし子孫がいない場合は、両親や祖父母といった尊属が第二順位として相続人になります。さらに、第一順位と第二順位の相続人が不在の場合のみ、兄弟姉妹が第三順位の相続人としての権利を持ちます。兄弟姉妹が既に他界している場合は、その子(被相続人から見て甥や姪)への相続権の移行が可能です。

独身の人の法定相続人は誰になる?

未婚・離婚・死別などで配偶者がいない方が亡くなった場合、血縁関係者のみでの相続となります。こうした状況では、親族の近さによって定められた順位に従って相続人を決定します。同じ順位に複数名いる場合には、相続財産は均等配分という原則です。

子どもがいる場合

中には、独身であっても子どもがいるケースもあります。過去の婚姻関係からの子ども、事実婚のパートナーとの間に生まれ認知された子ども、養子縁組による子どもなど、様々なケースが存在します。このような場合、子どもたちが法定相続人という立場です。 注目すべきは、現代の相続制度における平等性です。かつては存在した嫡出子と非嫡出子の相続分の違いは、現在では完全に撤廃されています。血のつながった実子も養子も、全く同じ立場での相続が可能です。

子どもがいない場合

子どもがいない独身者の場合、まず両親への相続権の移行を行います。親が二人とも健在であれば相続財産は半分ずつ、一方の親のみ生存の場合はその親が全財産を相続という形です。 両親とも既に他界している場合は、祖父母の代まで相続権が遡ります。生存している祖父母全員での等分が原則です。例えば、父方の祖父母は既に他界し、母方の祖母のみ健在という場合、その祖母が単独での相続権を持つことになります。 このように、独身者の相続では血縁の近さを基準とした段階的な判断が特徴です。ただし、各段階で相続人が見つかった時点で、それより遠い親族への相続権は発生しません。

独身の人の法定相続人に関する注意点

相続の仕組みには、一般的な基本ルールの他に、いくつかの重要な特殊ケースが存在します。特に独身者の相続においては、以下の点への注意が必要です。

代襲相続

本来相続権を持つはずだった人が、相続開始前に死亡または相続権を失った場合に働く特別な制度が代襲相続です。例えば、独身で亡くなった人の子どもが既に他界している場合、その孫が親に代わっての相続権を取得することができます。 直系卑属(子孫)の場合、この代襲相続には世代の制限はありません。子も孫も既に他界している場合は曾孫が、さらにその先の世代まで順次相続権が移行していく仕組みです。これを「再代襲」「再々代襲」などと呼称します。 ただし、いくつかの重要な制限もあります。相続放棄は代襲相続の対象外であり、子が自ら相続を放棄した場合、その子である孫への相続権の移行はありません。また、兄弟姉妹の場合は代襲相続が1回限りです。甥や姪までは相続権が移りますが、その先の世代への継承は認められないという制度です。

片親のみ同じ兄弟姉妹

兄弟姉妹が相続人となる場合、両親が同じか片親だけが同じかで相続分に差が生じます。具体的には、片親だけが同じ兄弟姉妹の相続分は、両親とも同じ兄弟姉妹の相続分の半分という計算をします。 例えば、父親は同じだが母親が異なる兄と、両親とも同じ妹がいる場合の遺産分配比率は、兄:妹=1:2という結果です。これは、血縁関係の濃さを相続分に反映させる考え方に基づいた規定となっています。

非嫡出子

かつての相続制度では、婚外子(非嫡出子)の相続分は婚内子(嫡出子)の半分という不平等な扱いでした。しかし、2013年の最高裁判決でこの区別は違憲とされ、その後の民法改正で完全撤廃となりました。 現在では、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子も、内縁関係や婚外関係から生まれた子も、相続における権利は完全に平等という状態です。この改正は、子どもの出自による差別を解消し、憲法が定める法の下の平等を実現する重要な一歩となりました。 このように、独身者の相続には一般的な相続以上に複雑な要素が含まれているのが現状です。特に代襲相続の範囲や、兄弟姉妹間での相続分の違いなどは、相続手続きを進める上での重要なポイントです。非嫡出子の権利平等化は、現代社会における重要な法改正の一つとして広く認識されています。

独身の人の法定相続人が誰もいない場合

独身者の死亡時に、法定相続人が存在しないケース、または全員が相続放棄したケースでは、特別な手続きが必要になります。まず、利害関係者や検察官の申立てにより、家庭裁判所が相続財産管理人(2023年4月からは相続財産清算人)を選任します。管理人は2ヶ月の公告期間を設け、潜在的な相続人の有無を確認します。 この期間を経ても相続人が現れない場合は債務の清算手続きへと進みます。債務清算後もなお財産が残る場合、故人と特別な関係があった人々(特別縁故者)への分与を検討。特別縁故者には、内縁の配偶者、事実上の養子、献身的な介護者などが該当します。 ただし、特別縁故者への財産分与は家庭裁判所の裁量事項です。自動的な権利としては認められていません。また、特別縁故者が不在、または分与後も財産が残る場合は、最終的に国庫への帰属という結果になります。 独身者の相続は、一見シンプルに見えながらも、実は複雑な側面を持つ制度です。配偶者という要素が除かれる分、血縁関係者間での権利関係がより重要になります。特に、子どもの有無による相続順位の変化や、代襲相続、特別縁故者制度など、状況に応じて適用される規定の理解が不可欠です。 昨今の未婚化の進展に伴い、独身者の相続問題は今後さらなる増加が予想されます。こうした社会変化に対応するため、法制度も徐々に整備が進んでいますが、個々のケースで適切な判断を行うためには、専門家への相談も視野に入れた慎重な対応が望ましいと言えるでしょう。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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