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賃貸物件の相続税はどうやって計算する?計算例・節税対策についても紹介
2023/12/26 相続コラム
目次
相続した不動産の中に賃貸物件がある場合、自己の居住用物件の場合と異なる方法で相続税を計算します。このコラムでは、賃貸物件の土地と家屋の評価やそれぞれの計算方法、節税対策など、賃貸物件を相続する予定のある人に必要な情報をお届けします。
賃貸物件の相続税について
賃貸物件は自己の居住用物件の場合と同様に、家屋と土地それぞれ分けて評価を行います。ただ、税額を算出するための「相続税評価額」は、自己の居住用物件の場合よりも低くなります。このことから、節税効果が期待できるため、昨今では不動産投資としても人気があります。
なお、賃貸物件のなかでも、1棟賃貸物件と区分賃貸物件では相続税が異なります。賃貸物件1棟を相続する場合は、通常通り土地と建物が相続の対象になります。一方で分譲マンションは、所有者が個別に所有している部分と、所有者全体が共有している部分が存在します。このことから、分譲マンションの場合、独自に所有する部分と共有している部分が家屋の自己所有分となり、分譲マンションの土地全体に対する所有権の割合で分けたものが所有分となります。この建物と土地の所有分が相続の対象です。このように棟賃貸物件と区分賃貸物件では、区分賃貸物件のほうが相続税評価額が低く評価される傾向があります。
賃貸物件の相続税の評価
賃貸物件の相続で、土地と家屋の評価が下がる理由についてそれぞれ解説します。
賃貸物件の土地の評価
賃貸物件を建てた土地は、「貸家建付地」として評価されます。貸家建付地は、自用地と比べ相続税評価額が低くなります。以下の計算式で実際の評価額を算出することが可能です。
宅地の自用地としての価格 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の相続税評価額
賃貸物件の家屋の評価
賃貸物件の家屋は、固定資産税評価額を基準に評価されます。賃貸物件の家屋の実際の評価額は、以下の計算式で算出することが可能です。
固定資産税評価額 ×(1-借家権割合30パーセント×賃貸割合)=家屋の相続税評価額
上記の計算式にある借家権とは、賃借人が賃貸物件を利用する権利を指します。また借家権割合は、30パーセントと一律で決められているのです。そして賃貸割合とは、賃貸物件として提供する面積のうち、実際に賃貸されている面積を指します。賃貸されている面積が多くなるほど、賃貸割合も大きくなります。
固定資産税評価額を確認するには?
毎年市区町村から、「固定資産税・都市計画税の課税明細書」が送付されます。固定資産税評価額は、この課税明細書に記載されています。
賃貸物件の相続税評価額の計算例
それではここで、具体的な数字を使って、賃貸物件の相続税を計算してみましょう。
賃貸物件の例
- 相続人:1人
- 建物:7000万円
- 土地:3000万円
- 固定資産税評価額:実勢価格×60パーセント
- 借地権割合:60パーセント
- 賃貸物件の賃貸状況:30室中15室が入居中
- 借家権割合30パーセント
※賃貸の部屋の面積はすべて同じ面積とする
7000万円×(1-0.3×0.5)=5950万円
このように、上記例の賃貸物件の家屋部分の相続税評価額は5950万円です。さらに、土地にかかる相続税の評価額も具体的に計算してみましょう。
6000万円×(1-0.6×0.3×0.5)=5460万円
借地権割合は、土地に占める借地権の割合を指します。30~90パーセントで設定されていて、地価が高いほど借地権割合が高くなる傾向があります。
賃貸物件の節税対策
その他の相続税と同様に、賃貸物件を相続する場合にも節税できる対策がいくつかあります。ここでは代表的な賃貸物件の節税対策を紹介します。
小規模宅地等の特例
相続税には、さまざまな特例が定められていますが、賃貸物件の場合に適用できるものが「小規模宅地等の特例」です。この特例により、賃貸物件が建っている200平方メートルまでの土地の評価額を50パーセントに減らすことが可能です。なお、減額できる割合は、宅地の種類によっても異なります。以下で、減額される割合が異なる宅地の種類をご紹介します。
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等
330平方メートルまでの土地面積に対して相続税評価額を80パーセント減額
特定事業用等宅地等
400平方メートルまでの土地面積に対して相続税評価額が80パーセント減額
生前贈与
生前贈与は、将来発生する相続税を考慮し、節税対策として親族などに無償で財産を譲ることを言います。このコラムでは、賃貸物件の相続税についてご紹介していますが、賃貸物件などの不動産以外の財産の生前贈与を行うことで、相続遺産の総額を減らすことが可能です。
ローンでの支払い
これから賃貸物件を建てる場合、ローンを利用すると相続税を軽減できます。なぜなら、借り入れた資金で建てた賃貸物件は、一般的に借り入れた金額よりも低く評価される固定資産税評価額で評価されるためです。このことから、賃貸物件をローンで支払うと相続税の節税に繋がると言えます。
賃貸物件の相続税は、借地権割合や借家権割合などの賃貸物件の詳細の状況が関わります。また特例が利用できるかどうかによっても、税額が大きく変わるでしょう。ぜひこのコラムを参考に、相続予定の賃貸物件にかかる相続税額を実際に算出してみてください。
この記事の監修者
税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。