みなし相続財産とは|代表例・死亡保険金と死亡退職金の非課税枠や注意点を紹介
     

相続コラム

みなし相続財産とは|代表例・死亡保険金と死亡退職金の非課税枠や注意点を紹介

2024/03/20 相続コラム

相続税の中には、「みなし相続財産」という通常の相続とは異なる扱いになるものがあります。非課税枠が利用できたりとメリットもあります。相続がまさに発生していたり、これから相続する予定のある人は、ぜひ参考にしてみてください。

みなし相続財産とは

みなし相続財産とは、相続や遺贈によって取得したとみなされる財産を指します。つまり、民法上では相続や遺贈で取得したものではない財産を、相続財産として扱います。みなし相続財産の具体的な例としては以下のようなものが該当します。

みなし相続財産とされる財産は、主に保険会社や勤め先から支払われます。被相続人が実際に保有していた財産ではないことから、「みなし相続財産」と呼びます。

代表的な2つのみなし相続財産

相続が発生した際に扱う代表的なみなし相続財産に、死亡保険金と死亡退職金があります。それぞれ詳しく解説していきます。

みなし相続財産「死亡保険金」

死亡保険金とは、被相続人が死亡した場合に支払われる生命保険金です。生命保険契約に基づき、保険金は相続人や受遺者に支払われます。死亡保険金の条件を満たすには、保険料負担者と被保険者が被相続人で、受取人が相続人または受遺者である必要があります。

保険金受取人本人が保険料を支払っていた場合、保険金は一時所得の扱いになり、所得税が課税されます。また、保険金受取人以外の人が保険料を支払っていた場合、贈与税が課税されます。

みなし相続財産「死亡退職金」

死亡退職金とは、被相続人が勤めていた会社から支払われる退職金を指します。被相続人が退職する時に受け取るはずだったお金が、相続人に支払われます。みなし相続財産として課税されるのは、「被相続人の死亡日以後3年以内に支給が確定したもの」という条件を満たす死亡退職金です。つまりほとんどのケースがみなし相続財産に当てはまると考えてよいでしょう。

なお、相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日(通常は被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内という期限が設けられています。被相続人が死亡した翌日から10カ月を過ぎ、3年以内に死亡退職金が確定した場合、修正申告を提出する必要があります。申告した内容が「正当な理由があると認められる」と認められると、延滞税はかかりません。

死亡保険金と死亡退職金の非課税枠

みなし相続財産は、一般的な相続財産と同様に課税対象です。しかし、死亡退職金と生命保険金には非課税枠が用意されています。非課税枠は、それぞれ「500万円×法定相続人の数」です。その他、非課税枠の特徴を以下で解説します。

法定相続人は基礎控除と同じルール

みなし相続財産の法定相続人は、相続税の基礎控除額の計算方法と同様です。以下のルールをもとに計算します。

相続を放棄すると非課税枠の利用は不可

通常、遺産相続を放棄すると、財産の相続ができません。しかし、みなし相続財産は、被相続人本人の財産ではないことから、相続人が相続放棄をした場合でも受け取ることのできる財産なのです。ただし、相続を放棄した相続人は、非課税枠を利用できません。死亡退職金と生命保険金の金額次第で、多額の課税が発生する可能性もあるので、相続財産の総額を考慮し、相続を放棄するかどうかを判断できるとよいでしょう。

みなし相続財産の注意点

死亡退職金や生命保険金などのみなし相続財産は、民法上の相続財産と異なる考え方に基づいています。そのため、注意したい点がいくつかあります。ここでは代表的なものを紹介します。

みなし相続財産は遺産分割の対象ではない

死亡退職金や生命保険金は、被相続人本人の財産ではないみなし相続財産に該当するため、相続人固有の財産と考えられます。そのため、遺産分割の対象外という扱いになります。

贈与税や所得税が課税されることもある

保険の契約上、保険料負担者が被保険者ではない場合、贈与税や所得税、住民税が課税されます。これら3つの課税が生じるのは、以下のパターンです。

相続税が課税される:A=被保険者・保険料負担者、B=受取人(満期受取りの場合は贈与税)

贈与税が課税される:A=被保険者、B=保険料負担者、C=受取人

所得税・住民税が課税される:A=被保険者、B=保険料負担者・受取人

みなし相続財産は、契約形態によってかかる税金の種類が変わるので注意が必要です。

みなし相続財産は、遺産分割の対象外となったり、非課税枠があったりと、相続人にとってメリットとなる要素が多い財産でもあります。しかし、そのメリットは保険の契約形態に依拠することに気を付ける必要があるでしょう。後悔のない相続ができるように、ぜひこのコラムを参考にしてみてください。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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