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住宅ローンが残っている時の相続は?団体信用生命保険や抵当権抹消の手続きについて
2024/12/25 相続手続
目次
住宅ローン返済中に、ローンの債務者がなくなった場合、そのローンの支払いはどうなるのでしょうか?実際は、債務者が亡くなると、その住宅ローンは返済する必要がなくなることが一般的です。この記事では、住宅ローンの相続税や、加入している保険、抵当権抹消登記の手続きについてご紹介します。
住宅ローンが残っている場合、相続はどうなる?
住宅ローンの残債がある不動産を相続した場合の取り扱いについて、相続税の観点から説明します。相続税は、相続財産が一定額を超えた場合にのみ課税されます。この基準となる金額は「基礎控除額」と呼ばれ、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。例えば法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円となり、相続財産がこの金額を超える場合に相続税が発生します。
相続財産の計算において、不動産は課税対象となりますが、住宅ローンの残債は債務として相続財産から控除することが可能です。この「債務控除」により、課税対象となる相続財産の金額を減らすことができ、結果として相続税の負担が軽減されます。場合によっては、この控除によって相続財産が基礎控除額を下回り、相続税が発生しないケースもあります。
実際の相続財産の計算式は以下の通りです。
相続財産の金額 = 本来の相続財産 + みなし相続財産(生命保険金など)+ 生前贈与加算される財産 + 相続時精算課税制度による贈与財産 - 非課税財産 - 債務・葬式費用
なお、住宅ローンを契約する際には、ほとんどの場合で団体信用生命保険(団信)への加入が必要となります。この保険に加入していれば、借入者が死亡した場合、保険金によってローンの残債が完済されます。これにより、相続人は住宅ローンの返済を継続する必要がなく、債務のない状態で不動産を相続することが可能です。 なお、相続税の申告・納税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。住宅ローンが残っている不動産の相続においては、団信の有無や支払い状況を確認し、適切な相続税の計算を行うことが重要です。
団体信用生命保険に加入している場合の相続税
住宅ローンの契約者が団体信用生命保険(団信)に加入している状態で死亡した場合、相続税の取り扱いには特徴的な点があります。
団信から支払われる保険金は、相続人ではなく借入先の金融機関が直接受け取ります。このため、この保険金は、相続税の課税対象となるみなし相続財産には該当しません。通常の生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設定されていますが、団信の場合はこの非課税枠を利用することもできないのです。
住宅ローンは、団信の保険金により完済されるため、相続人が返済を引き継ぐ必要はありません。このことは相続税の計算にも影響を与えます。具体的には、住宅ローンの残債を相続財産から債務として控除することができなくなります。つまり、相続税の申告上では、住宅ローンはなかったものとして扱われるのです。
一方、住宅ローンが完済された不動産自体は、被相続人の財産として相続税の課税対象です。ローン完済後は、相続人が法務局で不動産の相続登記を行い、その後抵当権抹消登記を申請する必要があります。この手続きは、金融機関が積極的に行うわけではないため、相続人自身が忘れずに対応する必要があります。
なお、親子リレーローンを組んでいる場合、親子それぞれ、あるいは子のみが団信に加入していることが一般的です。親が団信に加入している場合、親の死亡時にその住宅ローンは完済となり、上記の通り債務控除の対象外となります。
一般的な生命保険に加入している場合の相続税
住宅ローンに関連して一般的な生命保険に加入している場合、相続税の取り扱いは団体信用生命保険(団信)とは大きく異なります。
被相続人が通常の生命保険に加入していた場合、相続人が受け取る保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。ただし、生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設定されています。例えば、法定相続人が4人で受け取った保険金が3,000万円の場合、2,000万円(500万円×4人)までは非課税となり、残りの1,000万円のみが課税対象となります。
住宅ローンに関しては、死亡時の残債は相続財産から債務として控除することができます。これは団信とは異なる点です。また、相続人は受け取った保険金を住宅ローンの返済に充てることも可能です。相続税が高額となる場合には、受け取った保険金を納税資金として活用することも検討できます。
不動産自体は、ローンの有無にかかわらず被相続人の財産として相続税の課税対象となります。このように、一般的な生命保険を活用する場合、非課税枠の活用と債務控除により、団信と比較して相続税の節税につながる可能性があります。
ただし、これらの取り扱いは被相続人が保険料を支払っていた場合に限られることに注意が必要です。生命保険と住宅ローンの組み合わせ方によって、相続税の負担額は大きく変わってくる可能性があります。
住宅ローン完済後は抵当権抹消登記の手続きを行う
住宅ローンを契約する際には、借入の担保として不動産に抵当権が設定されます。しかし、ローンを完済しただけでは抵当権は自動的に消滅しないため、抵当権抹消登記という手続きが必要となります。
この手続きには、不動産1件につき1,000円の登録免許税がかかります。土地と建物は別々に数えられ、土地付き建物の場合は2件分となります。また、土地が複数区画に分かれて登記されている場合は、区画ごとに件数が加算されます。一度に20件以上申請する場合は、一律2万円となります。
団体信用生命保険(団信)に加入していた場合
住宅ローンが団体信用生命保険(団信)により完済された場合、金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類が送付されます。ただし、抵当権抹消登記を行う前に、不動産の相続登記を完了させる必要があります。相続登記には、被相続人と相続人の戸籍謄本などの書類が必要となります。
通常の生命保険に加入していた場合
通常の生命保険に加入していた場合は、保険金は遺族に支払われるため、住宅ローンの返済には別途手続きが必要です。受け取った保険金でローンを返済する場合は、借入先の金融機関に連絡して必要な手続きを行います。その後、金融機関から抵当権抹消登記の書類を受け取り、相続登記と合わせて手続きを進めます。
抵当権抹消登記は、すぐに実害が生じるわけではありませんが、不動産売却やリフォームローンの利用に支障をきたす可能性があります。また、後日手続きを行おうとすると、必要書類の紛失などにより余計な手間や費用が発生する可能性もあるため、ローン完済後は速やかに手続きを行うことが望ましいでしょう。
抵当権を抹消する手続きは専門家である司法書士に依頼できる
抵当権抹消登記は自身で行うことができますが、登記の専門家である司法書士に依頼することも可能です。司法書士への依頼には主に2つのメリットがあります。
時間と手間を節約できる
法務局での手続きは平日の日中に限られるため、仕事を持つ人にとっては手続きの時間を確保することが困難な場合があります。司法書士に依頼することで、自身で法務局に出向く必要がなくなり、時間的な制約から解放されます。
確実な手続きを行える
司法書士は登記手続きの専門家として、抵当権抹消登記を確実に行うことができます。また、相続登記が未了の場合は、相続登記と抵当権抹消登記をまとめて依頼することも可能です。これにより、手続き全体をスムーズに進めることができます。
住宅ローンの契約者が亡くなった場合、まずは借入先の金融機関に連絡しましょう。加入している保険の確認など、その後の対応方法が明らかになります。また、加入している保険がわからない場合は、事前に確認しておけると安心です。
この記事の監修者
税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。