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形見分けと遺産相続は何が違う?形見分けのタイミングやトラブル&対応策もご紹介
2025/02/28 相続手続

目次
形見分けとは
形見分けとは、故人が残した物品を親族や友人で分け合う日本古来の習慣です。故人が生前大切にしていた衣服、アクセサリー、コレクション品、家具、家電、日用品、写真、絵画など様々なものが対象となります。 「片身分け」とも呼ばれるこの風習は、平安時代から続く伝統で、『栄華物語』にも記録が残されています。元来は衣類や装飾品を分けることで故人の魂を継承し、供養する意味がありました。 形見分けは必ずしも親族だけに限らず、故人と親しかった人々や趣味の仲間にも贈られます。たとえば釣り道具、ゴルフ用品、お花や料理の道具などを趣味仲間に譲ることもあります。 この習慣は、万物に神や霊が宿るという日本古来の宗教観から派生し、物を大切にする日本人特有の価値観を表しています。現代では様々な品が形見分けされるようになりましたが、「故人を偲ぶ」「思いを引き継ぐ」という本質的な意味は変わっていません。遺産相続と形見分けの違い
遺産相続と形見分けの違いは、主に「資産価値のある・なし」と「対象者が血縁者に限るか・限らないか」の2点に集約されます。これらの違いを理解することで、故人の遺品の扱い方が明確になります。遺産相続
遺産相続は、資産価値のあるものを法定相続人が受け継ぐ法的な手続きです。相続人は民法で定められており、まず配偶者が常に相続人となります。次いで第1順位は直系卑属(子供、孫など)、第2順位は直系尊属(親、祖父母など)、第3順位は兄弟姉妹(甥や姪を含む)となります。故人が遺言書を残している場合は、その内容が優先されます。相続手続きには法律に則った対応が必要で、相続税の支払いが発生することもあります。形見分け
一方、形見分けは、基本的に資産価値の低いもの(原則として年間110万円以下)を対象とし、血縁関係にかかわらず故人と親しかった人々に分け与える習慣です。友人、同僚、趣味の仲間など、親族以外も対象となります。形見分けの対象は「財産としてはほとんど価値のないもの」であることが特徴です。 相続対象となる「財産として価値がある」と判断されるものは、相続人間での遺産分割が必要になります。相続手続きを行う際には、法定相続人全員の同意が必要になるケースもあるため、遺品には独断で手をつけず、正式な相続手続きを経ることが重要です。 形見分けは法的な手続きというよりも、故人を偲び思い出を共有する文化的・情緒的な側面が強い習慣であるといえます。形見分けをするのはいつ?
形見分けを行うタイミングに明確な決まりはありませんが、一般的には「四十九日法要」後の「忌明け(きあけ)」が適切とされています。故人の葬儀直後に急いで遺品を探したり分けたりすることは、マナーとして好ましくありません。 四十九日法要が終わり、親族や友人の気持ちが落ち着き始めた頃に形見分けを始めるのが自然です。この時期は悲しみが少し和らぎ、冷静な気持ちで故人の遺品と向き合えるようになります。また、四十九日法要には多くの親族が集まることが多いため、故人を偲びながら思い出話をしつつ形見分けについて話し合うのに適した機会でもあります。 形見分けは日本独特の慣習であり、故人の思い出を大切にしながら、遺された品々を有効に活用する意味があります。故人が生前大切にしていた品々を手に取りながら、その人柄や思い出を語り合い、感謝の気持ちを新たにする時間として、忌明け後の形見分けの機会を活用するとよいでしょう。形見分けでありがちなトラブル
形見分けは故人を偲ぶ大切な習慣ですが、「誰が何を譲り受けるか」をめぐって様々なトラブルが発生することがあります。主な問題とその対策について説明します。口約束による混乱
生前に口約束だけで形見分けを約束していた場合、後々親族間でトラブルになりやすくなります。特にジュエリー、絵画、書物、着物、コレクション、高級食器などの高価なものは「売って利益を得るのでは」と疑念を持たれることもあります。 証拠がない口約束は信憑性を疑われやすく、たとえ事実であっても他の相続人から見れば平等性に欠けると判断されることがあります。このようなトラブルを防ぐためには、遺言書やエンディングノートに記録しておくか、複数の親族の前で約束を交わしておくことが重要です。誤った処分による問題
遺品整理の際に、価値がないと思って捨ててしまったものが、実は誰かにとって大切な思い出の品だったというケースもあります。一度処分してしまったものは取り戻せないため、遺品に手をつける前に形見分けについて十分に話し合っておくことが必要です。第三者からの申し出
故人の友人や知人など、親族があまり知らない第三者から「形見分けとして譲ってほしい」という申し出があることもあります。故人が生前に親しくしていた相手であれば対応も比較的容易ですが、隠し子や愛人など親族が知らない深い関係がある場合は大きなトラブルに発展する可能性があります。 第三者からの申し出には一概に拒絶するのではなく、まずは話を聞き、必要に応じて戸籍調査などで関係性を確認することも検討しましょう。財産価値のある形見の扱い
宝石、時計、絵画、骨董品など財産価値のある可能性がある形見は、相続税の対象となることがあります。こうした品は遺産分割が完了するまでは相続人間の共有財産として扱われるべきです。 一部の親族が「これは形見で財産価値がない」と独断で判断して処分したり贈ったりすると、後々相続トラブルの原因になります。財産価値があるかどうか判断が難しい場合は、専門家に鑑定を依頼するとよいでしょう。高価と判断された場合は、他の財産と同様に相続人全員の合意を得て形見分けを行うことが重要です。 形見分けは故人の思い出を大切にする文化ですが、関係者間で十分なコミュニケーションを取り、透明性を持って進めることがトラブル防止につながります。 形見分けは故人を偲び、思いを継承する大切な習慣です。財産的価値が110万円を超えるかどうかで扱いが変わるため注意が必要です。理想的には生前に話し合いをしておくことですが、それができない場合は専門家のアドバイスを求め、故人への敬意と相続人の関係を大切にして進めましょう。この記事の監修者

税理士
佐野理子
相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。