相続税の負担を減らせる主な控除・特例まとめ|計算方法もご紹介
     

相続コラム

相続税の負担を減らせる主な控除・特例まとめ|計算方法もご紹介

2025/01/09 相続手続

相続税の支払いには、基礎控除に加え、小規模宅地等の特例など複数の控除制度を活用することで、相続税の負担を効果的に抑えることができます。本記事では、各種制度の詳細と適用条件を具体的に説明していきます。

相続税の負担を軽減する特例・控除には3つのパターンがある

相続税に活用できる多種多様な特例・控除は、主に下記の3つの種類に分けられます。 相続税から控除されるのは、主に配偶者の税額軽減や、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、贈与税額控除です。また、相続税がかかる財産の価格を減らすことができる、小規模宅地等の特例があります。そして、非課税限度額のあるのは、生命保険金や死亡退職金です。 このように、相続税に活用できる特例・控除は、これらの3つに分けられます。 これらの特例・控除について説明する前に、相続人になったすべての人が使える「基礎控除」について解説します。

基礎控除とは

相続税における基礎控除は、遺産に対する税負担を軽減する重要な制度です。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で算出され、この金額が課税対象となる遺産総額から差し引かれます。 遺産総額は、被相続人の預貯金、不動産、有価証券などのプラス財産から、借入金や未払い税金などの債務および葬儀費用などのマイナス財産を引いて計算します。この遺産総額が基礎控除額を超過した場合にのみ、その超過分に対して相続税が課税されます。 例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の計3人で、遺産総額が6億円の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。この場合、5億5,200万円(6億円-4,800万円)が課税対象額となります。 一方、同じく法定相続人が3人でも、遺産総額が4,500万円の場合は、基礎控除額4,800万円を下回るため、相続税は発生しません。 このように、基礎控除は相続税の課税対象となるかどうかを判断する最初の基準となり、すべての相続において適用される基本的な控除制度です。

相続税額から差し引くことのできる控除や特例

ここでは、課される相続税額を軽減することのできる控除や特例についてご紹介します。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が相続する財産に対する税負担を大幅に軽減する制度です。配偶者が相続する財産が1億6,000万円以下、もしくは法定相続分以下であれば、相続税がゼロになります。 例えば、遺産総額が3億円で配偶者が1億5,000万円を相続する場合、1億6,000万円以下なので相続税は発生しません。また、遺産総額が5億円で配偶者と子1人が相続人の場合、配偶者が法定相続分の2億5,000万円を相続しても、法定相続分の範囲内であれば非課税となります。 配偶者の税額軽減の制度は、配偶者の遺産形成への貢献や、将来的な相続の可能性を考慮して設けられているものです。ただし、この軽減措置は法律上の配偶者のみが対象で、事実婚(内縁関係)には適用されません。また、軽減措置の適用後、相続税額がゼロでも申告は必要です。

未成年者控除

未成年者控除は、相続人が18歳未満の場合に適用される特別な税額控除制度です。未成年の相続人には教育費や養育費など将来的な支出が必要となることを考慮して設けられています。 控除額は「(18歳-相続時の年齢)×10万円」で計算されます。例えば10歳の相続人の場合、(18歳-10歳)×10万円=80万円が控除されます。この金額は相続税額から差し引かれます。 なお、令和4年4月の民法改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、未成年者控除の計算式も変更されました。相続時期によって適用される年齢が異なりますので、注意が必要です。

障害者控除

障害者控除は、障害のある相続人の生活支援を考慮した税額控除制度です。85歳までの残年数に応じて、一般障害者は年10万円、特別障害者は年20万円が控除されます。 例えば、45歳の一般障害者の場合、(85歳-45歳)×10万円=400万円が控除されます。特別障害者の場合は同じ条件で800万円となります。 控除額が相続税額を超える場合、その超過分は他の相続人で扶養義務者の相続税額から控除できます。例えば、相続税額が300万円で控除額が400万円の場合、差額の100万円を扶養義務者の税額から控除できます。 相続開始時の年齢は満年齢で計算し、1年未満の端数は切り捨てられます。

相次相続控除

相次相続控除は、10年以内に複数回の相続が発生した場合に適用される税負担軽減制度です。同じ財産に短期間で二重に課税されることによる負担を軽減する目的があります。 以下の3つが適用条件です。 控除額は、前回の相続での納付税額を基に、相続財産額や期間などを考慮して計算されます。例えば、父の相続から2年後に母が亡くなった場合、母が前回支払った相続税1,000万円の約8割(800万円)が控除対象となります。 計算方法は複雑で、「前回の相続税額×(今回の相続財産÷前回の取得財産)×(今回の取得財産÷今回の総財産)×(10-経過年数)÷10」という式を使用します。専門的な計算が必要なため、税理士等への相談が推奨されます。

贈与税額控除

贈与税額控除は、相続税と贈与税の二重課税を防ぐための制度です。相続開始前3年以内、令和6年1月1日以降の贈与については7年以内の贈与財産、または相続時精算課税制度を利用した贈与財産は相続財産に合算されますが、既に支払った贈与税額は相続税額から控除されます。 例えば、相続前3年間に毎年500万円の贈与を受けた場合、各年の贈与税額(48万5,000円)の合計145万5,000円が相続税から控除されます。相続時精算課税分の贈与税額が相続税額を超える場合は、超過分が還付されます。 この控除は、自動的には適用されないため、適切な計算と申告が必要です。不明な点がある場合は、税理士への相談が推奨されます。

相続税がかかる財産の金額を減らすことのできる特例

続いて、相続税がかかる財産の金額である「課税価格」を減額できる「小規模宅地等の特例」についてご紹介いたします。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、相続した土地の評価額を大幅に減額できる制度です。この特例は、相続税の支払いのために居住地や事業用地を手放さなければならない事態を防ぐことを目的としています。 土地の用途によって以下の3つに分類され、それぞれ減額割合と限度面積が定められています。 特定居住用宅地等 特定事業用宅地等 貸付事業用宅地等 例えば、評価額1億円の居住用宅地(330㎡以下)を相続した場合、特例適用により評価額を2,000万円まで減額できます。申告期限までの所有継続など、適用条件の確認が重要です。

非課税限度額が設けられている財産

最後に、非課税枠が設けられている「生命保険金」と「死亡退職金」をご紹介いたします。

生命保険金

生命保険金の非課税制度は、被相続人の死亡により支払われる保険金の一定額を相続税の課税対象から除外する制度です。非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で計算されます。 例えば法定相続人が2人の場合、合計1,000万円までの生命保険金が非課税となります。これは、残された相続人の生活保障を目的とした制度で、適用対象は相続放棄者を除く法定相続人に限られます。 ただし、被相続人が契約者かつ被保険者で保険料を負担していた場合、死亡保険金は「みなし相続財産」として扱われます。非課税限度額を超える部分は課税対象となりますが、基礎控除額を下回る場合は申告不要です。

死亡退職金

死亡退職金の非課税制度は、被相続人の死亡に伴い支給される退職金の一部を相続税から除外する仕組みです。非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で計算されます。 例えば、法定相続人が3人で死亡退職金が2,500万円の場合、非課税限度額は1,500万円(500万円×3人)となり、超過分の1,000万円が課税対象となります。 この制度は相続人の生活保障を目的としているため、相続放棄者や相続権を失った者、相続人以外の受取人には適用されません。また、非課税限度額を超える部分は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。 今回は、相続税に活用できる控除や特例について、代表的なものをご紹介しました。ただし、実際の適用にはそれぞれ詳細な条件があります。具体的な適用条件や手続きについては、税務署または相続税の専門家に相談することをお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、ご自身のケースに最適な控除・特例を選択できます。

この記事の監修者

税理士 佐野理子

税理士
佐野理子

相続担当税理士として、お客様からのご相談をお受けさせていただいております。
これまで多くの相続税申告に携わってまいりました経験をもとに、相続人のみなさま方の立場に立ってご相談をお受けし、申告業務を進めさせていただきます。

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